学術誌『Journal of Thermal Biology』に掲載された2015年の論文は、特に驚くべき適応形質の一つが、深部体温を一定に保つ能力だと指摘している。ほとんどの爬虫類とは異なり、オサガメは深部体温を、水温と比べて摂氏にして最大で18度も高く保つことができる。こうしたことが可能なのは、以下の特徴のおかげだ。
・並外れた巨体
・対向流熱交換(Countercurrent Heat Exchange:動脈と静脈が平行に流れ、互いに逆方向に流れることで、熱などを非常に効率よく交換する仕組み)
・皮下脂肪層による断熱
・継続的な筋肉活動
こうした「慣性恒温性(gigantothermy:変温動物であっても、体格が巨大なため、比較的安定した高い体温を保てること)」のおかげで、オサガメは、熱帯から亜北極圏まで、地球上の海域の大部分に生息する。広大な分布域を考えれば意外ではないが、オサガメが1万km以上の距離を泳いで移動した記録さえある。
オサガメの衛星追跡により、彼らが大量発生するクラゲを捕食するためだけに、時に海盆(海底の大規模な凹所)を横断する規模の大移動をすることも示された。産卵の際には、彼らは先祖代々利用してきた砂浜に戻ってくる。こうした砂浜のなかには、すでに絶滅した種を含むこの系統が、数百万年にわたって利用してきたものもあるはずだ。
なぜ陸上で産卵するのか
オサガメは、ほぼ完全に海生だが、繁殖に関しては陸に依存している。メスは、産卵期に数回砂浜に上陸して、深さ80~100cmの穴を掘る。そしてそのなかに、一度につき60~100個の卵を産む。
驚くことに、この繁殖戦略は2億年以上にわたって変わっていない。初期のカメは地上で進化し、のちに海に戻ったが、子孫のなかに、胎生(胎児が卵の中ではなく、母親の胎内で発達する繁殖様式)に進化したものはいない(同じ爬虫類でも、ヘビやトカゲには子を産む種が少なくない)。おそらく、カメにおいては甲羅の形態が制約となり、胎生への進化がほぼ不可能だったのだろう。
興味深いことに、オサガメの産卵は、温度依存性決定(TSD:Temperature-dependent sex determination)という興味深い生物学的特徴を伴う。卵を産む巣穴の温度が高ければ、子はメスが多くなり、低ければオスが多くなることが知られている。
古い起源をもつこの性決定システムは、オサガメの個体群が、古代の気候変動に適応するのに役立ったのだろう。だが、研究者が指摘するように、温度依存性決定は現代において、むしろ生存の足枷となるおそれがある。彼らの産卵場所である砂浜は、地球温暖化の影響下にあるからだ。
とはいえ、温度依存性決定が長い年月にわたって維持されてきたことを考えれば、かつては極めて効率的なものだったはずだ。


