経営・戦略

2025.12.17 13:30

日本企業の「稼ぐ力」向上の鍵は「所有と経営の分離」にある

Vector_Bird / Shutterstock.com

Vector_Bird / Shutterstock.com

2025年10月24日発売のForbes JAPAN12月号第一特集は、「新いい会社ランキング2025」特集。上場企業を対象にした毎年恒例の大企業特集では、今年は「ステークホルダー資本主義ランキング」と、新たに「ESGフィット度ランキング」の2つを掲載している。ステークホルダー資本主義ランキングは、「地球(自然資本)」「従業員」「サプライヤー・地域」「株主」「顧客・消費者」の5つのカテゴリーで解析。ESGフィット度ランキングでは、サステナビリティ情報開示の義務化が進むなか、ESGの取り組みを自社の「稼ぐ力」につなげている企業を導き出した。同号では2つのランキング、IPOランキング上位の11企業の経営者インタビューを一挙掲載している。

大企業のエリート社員の不祥事や経営者の退任騒動など、日本の大企業に関するニュースが世間をにぎわせている。


企業への信頼回復と持続的な成長に向けて、今こそコーポレートガバナンスを再考すべきだ。

経営者の退任や社員の不祥事の発覚など、日本の大企業に関するネガティブなニュースは後を絶たない。コーポレートガバナンス強化の必要性が指摘されるなか、企業はどこから取り組むべきなのか。元ネスレ日本社長兼CEOの高岡浩三に、日本企業のガバナンスの改善ポイントを聞いた。

──外資系と日本企業のコーポレートガバナンスの違いは。

高岡浩三(以下、高岡会社法では原則、「会社は株主のもの」だ。しかし日本では「会社は社員のもの」という意識が根強く、所有と経営の分離が進んでいない。外資系企業とは考え方が根本的に異なる。

例えば、取締役には株主の代表として執行役員を監督することが求められる。そのため、外資系では取締役の8割から9割が社外の人材で構成され、その大半がCEO経験者などの「プロ経営者」だ。

一方、日本企業では取締役が執行役員を兼ねていることが多い。彼らが社外取締役を選ぶため、自ずと「自分たちのやり方に口を出さない人」を選びがちになる。結果、企業経営の経験がない弁護士や会計士、学者、キャスターなどが起用されているのが現状だ。「社外取締役がタレント化している」という指摘もうなずける。

──日本企業も、取締役に占める社外取締役の割合を増やすべきか。

高岡:コーポレートガバナンスを強化するためには、社外取締役を過半数にするのは絶対条件だ。だが、日本では経営の監督機能と業務執行機能を分離した「指名委員会等設置会社」は全上場企業の2.5%にすぎず、独立社外取締役が半数未満の企業は全上場企業の86%にのぼる。これは執行役の保身にほかならない。外部から真っ当な指摘を受けにくい環境は、企業の持続的な成長や改革を阻む可能性がある。

──とはいえ、日本国内には、取締役会で執行役を監視できるだけの力量が備わっているビジネスパーソンが少ない。

高岡:コーポレートガバナンス改革を進めるためには、「プロ経営者」の育成が急務だ。しかし、日本の教育プログラムではMBAを含め、実践的な経営スキルを習得するのが難しい。経営のプロを育てる力の欠如が、国際競争力の差に直結しているといえる。

次ページ > 権力は悪用されやすい

文=瀬戸久美子

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事