ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は最近、ホワイトハウスへの訪問を成功裏に終え、サウジアラビアと米国の80年にわたる戦略的関係を強化した。砂漠の王国の技術進歩への探求が中心的な話題となった。しかし、サウジアラビアをAIのグローバルリーダーにすることは依然として困難な課題だ。
リヤドで毎年開催され、未来投資イニシアチブ（別名「砂漠のダボス会議」）はビジョン2030の計画を紹介するイベントで、AI開発の中心的な舞台となっている。現在AIの分野で中国と米国に後れを取っているサウジアラビアは、世界のAIとデータインフラ競争における主要プレーヤーになることを目指している。同国のAI部門への転換は、石油価格の変動から自国を保護するための潜在的な経済多角化以上の意味を持つ。成功すれば、中東とアラブ世界のグローバルパワー競争における転換点にもなり得る。しかし、これらの野望の前には険しい道のりが待ち受けている。
サウジアラビアのAI戦略
サウジアラビアはAI競争で他の競合国に後れを取っているかもしれないが、それは努力不足ではない。2019年に設立されたサウジデータ・人工知能局は、研究開発と主要なAI経済になるための道筋に焦点を当て、王国をAI発展に向けて推進しようとしている。AI開発への投資は、サウジアラビアの競争力を強化し、石油経済を超えて進むための方法と見なされている。
同国の野心的な投資プログラムは、AIインフラを構築・維持することの大きな利益を理解した上で推進されている。王国の莫大な石油収入は、AI研究開発、データセンター、その他のエネルギー集約型事業に活用できる。AI開発は、サウジアラビアがエネルギー輸出への依存から脱却し、経済多角化を達成するための手段となる可能性がある。
計算能力に焦点を当て、サウジアラビアは主要なAIおよび技術企業との関係構築を望んでいる。特に、同国の代表的な「HumAIn」プラットフォームの立ち上げと米国企業クアルコムとのパートナーシップは、5月のトランプ大統領の地域訪問に合わせてタイミングが設定され、王国のハイテク事業を現代のサウジ・米国関係の礎石として位置づけた。
チップ製造やソフトウェアシステムなどの分野をリードする米国企業とのパートナーシップは、両国間のさらなる貿易と投資を促進できる。米国から先進的なチップを輸入しようとする中国とのパートナーシップの機会は少ないかもしれないが、サウジアラビアの競争における独自のポジションにより、両方のテクノロジーリーダーと交渉できる可能性がある。
米国と中国によるサウジアラビアでのインフラ開発は、テクノロジー競争の地政学を変える可能性がある。ライバル国との関係を構築し、統合されたハブ内でテクノロジーエコシステムを発展させることを許可することは、リヤドが王国は誰の懐にもないというシグナルを送っているのかもしれない。サウジアラビアに最初に統合するテクノロジーリーダーは、ほぼ確実に地域で優位性を獲得するだろう。
サウジアラビアのAI開発の限界
サウジアラビアがAI大国になるという野望にもかかわらず、制約によってセクター成長に不可欠なインフラの発展が制限される可能性が高い。データセンターには膨大な量の水が必要であり、王国の資源は限られている。サウジアラビアの地理的位置を考えると、データセンターを冷却するために必要な水の確保は課題となる。海水淡水化は特にエネルギー集約的なプロセスであり、現在豊富な太陽エネルギーで生産される水は飲用には高すぎるため、データセンターの冷却には向かない。莫大な量の石油を生産しているにもかかわらず、王国は十分なガス供給が不足している。
アラビア砂漠の高温は、水による冷却をさらに高コストで維持が難しいものにしている。さらに、砂漠環境でのインフラ構築には、空冷効率やグリッド安定性などの分野で追加コストがかかる。
人的資本とリソースも同様に重要だ。サウジアラビアは現在、人材プールが浅い状況にある。王国は何十年もの間、STEMやその他の学問分野を除外して大学まで宗教教育を許可し、市場性のあるスキルを持たない何百万人もの人々を卒業させてきた。このギャップを認識することは成長への第一歩だが、それでも王国の指導者たちが将来に描くビジョンの実現には障壁となっている。インフラが構築され使用準備が整った後、競争力のある有益なAI研究における同国の野望は、数十億ドルと広範な専門知識によって支えられる必要がある。
サウジの指導部は、20世紀の石油経済から21世紀のハイテク社会への移行の必要性を明確に理解している。しかし、同国のAI推進には、王国の資金を喜んで受け取る技術系エグゼクティブとの会合や業界リーダーとの関係構築以上のものが必要だ。それは、成功に必要なものを深く理解することも求められる。地理的、技術的、人的資本の制限が、現在可能なことを決定し、AIエコシステムが発展するためには克服されなければならない。サウジアラビアの未来産業への転換は理解できるし望ましいものだが、指導者たちは社会全体の賛同を確保し、この科学とテクノロジーの新時代を迎えるための十分な準備が整っていることを確認する必要がある。
