LiDARやバッテリーなど部品価格が下落、ハードウェアは導入障壁ではなくなった
BMWのi7向けにLiDAR(ライダー)センサーを供給しているInnovizによれば、LiDARの価格は7万5000ドル(約1200万円。1ドル=156円換算)から「数千ドル(数十万円)ではなく数百ドル(数万円)」にまで下がったという。同時に、この10年ほどでバッテリー価格も約85%下落した。センサーは安くなり、チップは安くなり、アクチュエーター――いわばロボットの筋肉にあたる部品――も同様に安くなっている。
ヒューマノイドの製造コストは1年で40%低減
フルサイズのヒューマノイドロボットについては、コストが40%低下したと、ゴールドマン・サックス・リサーチは述べている。想定を上回る速さだ。
「ヒューマノイドロボットの製造コストは下落しました。昨年時点では1体あたり、ローエンドモデルで推計5万ドル(約780万円)、最先端モデルで25万ドル(約3900万円)というレンジでしたが、現在では3万ドル(約468万円)から15万ドル(約2300万円)のレンジになっています。当社のアナリストは年率15〜20%程度の下落を予想していましたが、実際には40%下落したのです」。
フィジカルAIは衝突回避のために低遅延が必須、機体内部での計算能力が要求される
もちろん、コストが下がってきたとはいえ、AIに身体を与えることは決して容易ではない。
フィジカルAIとは、ロボットがクラウドに接続してChatGPTに問い合わせ、10秒後に答えを受け取るだけで良いというものではない。ロボットが衝突を回避したり、重い物体を安全に持ち上げたり、人間のそばで停止したりしなければならない場面では、レイテンシー(応答遅延)が極めて重要になる。つまり、機体内部に十分な計算能力を搭載する必要があるということだ。
「非常に高速なリアルタイム処理や反応が必要であれば、その処理はおそらくエッジ側に置くことになります」とギルバートは言う。
しかし、すべての処理に即時性が求められるわけではない。一部の処理はローカルサーバーやクラウド側に置かれ、そこでは、多少レイテンシーが高くても許容されるような、より難度の高い推論タスクを、より大きなAIモデルが担当することになる。その結果として、デバイス上の反射的な制御、ローカルでの推論、そしてクラウドベースの学習と最適化を組み合わせたハイブリッド型アーキテクチャが構築されている。
ハードウェアの低価格化、高性能化したAI、そしてオンデバイスとクラウドのハイブリッド計算の組み合わせが、極めて速い開発スピードを可能にしている。


