中古衣料のネット販売と聞くと、最もセクシーなベンチャーには思えないかもしれない。
しかし、過去3年間で、中古ジーンズやセーターの販売から永続するビジネスを生み出そうと試みるスタートアップが登場し始めている。これらの企業は2013年以来、合計で2億ドル(約240億円)もの資金を調達している。
中古衣料販売で最初に立ち上がったスタートアップの一つ、thredUPは 9月10日、ゴールドマン・サックスが主催するラウンドで8,100万ドル(約97億2,000万円)を調達したと発表した。サンフランシスコを拠点とするthredUPは、2009年の創業以来、総額1億2,500万ドル(約150億円)を調達したことになる。
「アメリカの親は、年間80億ドル(約9,600億円)相当の子供服を他人に譲っている」とthredUPの共同創業者でCEOのJames Reinhartは述べ、thredUPの成長可能性の高さを示唆する。
「それでも、道で10人に声を掛けてeBayで服を売った経験を尋ねると、せいぜい5人も見つかればいいほうだ」とReinhartは言う。
eBayで衣類を出品して販売するのは非常に手間の掛かる作業だ。thredUPはeBayなどとは異なり、全ての作業をプラットフォームが代行する。ユーザーは、専用のバッグに売りたい衣類を入れてthredUPに郵送すれば、あとはthredUPが中身の分類から、出品、保管、出荷に至るまで、全ての工程を担ってくれる。
thredUPによると、同社のウェブサイトに掲載されているブランドの数は25,000を超え、毎月処理する衣類の数は、2016年末までに200万着に達するとしている。現状は、ユーザーから送られてくる衣料の約50%がサイトに出品されるという。
thredUPはまだ赤字だ。しかし、新品なら50ドルするBanana Republicのカーキパンツの中古品をたった12ドルで販売するようなマーケットプレイスを運営している割には、利益率が高い方だとReinhartは言う。出品者がthredUPでアイテムを販売して得る金額は、他のサイトに比べて大幅に少ない。
その理由は、thredUPが作業を全て代行するからだ。Reinhartは、そこがカギだと言い、thredUPは、作業を代行してくれなければ出品しないようなユーザーが集まる、「拡張マーケットプレイス」だと言う。
「ユーザーにとって別の選択肢は、無料で人に譲ることだ。多くの人は、自分の持ち物を売ることはしない。それは、消費者にとって通常の体験ではないんだ」とReinhartは言う。
中古衣料マーケットプレイスの多くは、既に顧客離れが進んでいるが、thredUPは全ての作業を請け負うビジネスモデルで、ライバルとの競争に打ち勝つことができると考えている。
7月には、競合の一つであるTwiceがeBayに買収された。Twiceは投資家から2,300万ドルを調達したものの、業績の低迷が伝えられていた。この市場にはライバルが多く、Poshmark、Tradesy、ThreadFlipの他、高級デザイナーファッションに特化したThe RealRealなどの競合がひしめいている。
Rinehartは、ゴールドマン・サックスから調達した資金によって、これらのライバルを凌ぐことができると話す。今後、物流倉庫を新たに2つ稼働させ、社員数は現在の600人ほどから1,000人に増やす計画だという。
調査会社VC Expertsが入手した資料によると、今回の調達ラウンドにおけるthredUPの評価額は、約4億ドル(約480億円)で、調達した資金の一部は、マーケティングにも使われるという。thredUP自身は、評価額についてコメントしていない。
ゴールドマン・サックスは、thredUPに出資する1週間ほど前に、中古自動車のオンラインマーケットプレイスを運営するShift Technologiesの調達ラウンドも主催している。ゴールドマンは、今回の出資によってthredUPに取締役を派遣するという。
「ブランド志向の消費者は、これまで中古衣類を買うことに対して否定的だったが、thredUPはこうした認識を覆すことができる」と投資を実行したGSIP Private InvestmentsのIan Friedmanは声明の中で述べた。また、Friedmanは、「thredUPのユーザーの半数以上は、それまでの一年間で中古衣料を購入していないことがわかり、潜在成長力の大きさも魅力だ」とも話している。
今回のラウンドには、thredUPの既存株主であるTrinity Ventures、Redpoint Ventures、Highland Capital Partners、Upfront Venturesも参加している。