Androidの世界の中核には大きなねじれがある。これは、世界で最も普及しているオペレーティングシステム(OS)の長期的な将来にとって最大のリスクであり、しかもそのねじれは今後さらに悪化しようとしている。
サムスンは最も人気のあるAndroid端末メーカーであり、販売されるAndroidスマートフォンの3台に1台はGalaxyだ。その次にXiaomi、Vivo、Oppoが続く。Pixelは販売ランキングの上位にはまったく姿を見せず、多くの市場でシェアは1桁台前半にとどまっている。
それでも、最優先されるのはPixelだ。Androidの新バージョンはまずPixelに提供される。新しいセキュリティ機能、プライバシー機能、AI機能も、まずPixel向けに提供される。毎月のセキュリティアップデートやゼロデイ脆弱性への緊急パッチでさえ、最初に配信されるのはPixelだ。あらゆるものがPixelから始まる。
サムスンはアップルと競合している。iPhoneメーカーであるアップルはすべてを自社でコントロールし、すべてのデバイスを同時にアップデートする。中国の端末メーカー各社は、独自のHarmonyOSを擁するファーウェイと自国市場で競っており、ファーウェイ側はハードウェアとOSについてアップル同様のコントロールを行っている。
そしてAndroid陣営の内部では、Pixelも今や同じ立場になっている。
グーグルは現在、Androidを変えつつある。「Androidアップデートの仕組みに新たな章を刻み、年1回のOSのアップデートから、より頻繁なリリースへと移行する。これにより、新機能は準備が整い次第すぐに提供されるようになる」というわけだ。
もっとも、それはPixelを持っていればの話だ。サムスンを含む他の端末メーカーは、グーグルのアップデートを受け取り、それを自社のOSに組み込んで独自のソフトウェアとして仕立て直さなければならない。サムスンのOne UI 7やOne UI 8の遅延を見れば、その問題は一目瞭然だ。開発された「生」のAndroidを、そのまま製品版としてリリースできるのはPixelだけである。
「グーグルの新しいAndroidアップデート計画は、ついにあなたをPixelスマートフォンへと向かわせることになるかもしれません。グーグルによるより高速なアップデートは、他のスマートフォンが追いつけない優位性をPixelに与えるかもしれないのです」とテックメディアPhone Arenaは述べる。「グーグルは、状況を大きく揺るがしかねない変化を起こそうとしています」。
「最新のAndroid機能と最高レベルのパフォーマンスを本当に重視する人にとって、Pixelスマートフォンはこれから、はるかに魅力的な選択肢になろうとしています」とPhone Arenaは続ける。「グーグルは、他社ブランドのスマートフォンを遅く、もたついているように感じさせてしまう可能性があります。ソフトウェア体験を自らコントロールできることは大きな強みであり、それによってPixelスマートフォンが、Androidユーザーにとっての“本命”の選択肢になる可能性があるのです」。
さらに、より重要な問題もある。今月1日、グーグルはAndroidユーザーに対し、スマートフォンが攻撃を受けており、2件のゼロデイ脆弱性が実際に悪用されていると警告した。Pixelは急いでアップデートを配信したが、他の端末メーカーが同じことをできるのははるかに遅い。Android陣営のトップランナーであるサムスンでさえ、すべての端末をアップデートし終えるまでには数週間を要する見通しだ。
グーグルによるAndroidの所有は、競争条件が公平だった間はうまく機能していた。しかし、Pixelへの注力が強まり、常にPixelが最優先されるというこの乖離が広がるにつれ、もはや競争条件は公平ではなくなりつつある。どこかの時点で、何かを変えざるを得なくなるだろう。



