2024年、中学2年生の夏、近藤にこるはAI教育ワークショップの開催などを展開するEdFusion(エドフュージョン)を立ち上げた。彼女はいま、名古屋・大阪・東京を飛び回り、各地でのワークショップ開催に加え、大阪・関西万博関連イベントなどにも登壇。日本青年会議所主催「第9回価値デザインコンテスト」(2025年7月)では文部科学大臣賞を受賞するなど、その活動の幅を急速に広げている。
14歳起業家の行動力や事業推進力は、どのようにして育まれたのか。
「起業」に出会った中学1年の冬
起業との出会いは、愛知教育大学附属名古屋中学校1年生の冬の起業体験授業だった。6回の授業で、起業家による講演や、チームで事業アイデアを考案して審査員に発表するプログラムが行われた。
「最初は“会社って何?”という状態でした。でも、みんなでアイデアを出し合い、『生徒の意見を学校運営に生かすことができる主体性向上システム』を考えてプレゼンしたところ、最優秀賞をいただいたんです。その瞬間、自分がやりたいのはこれだ!という感じで、起業という選択肢が浮かび上がってきました」
さらに、審査員として来校したSTATION Ai(名古屋のスタートアップ支援拠点)の担当者から、学生起業家育成プログラムSTAPSへの参加を打診された。このプログラムに参加すると、そこで特別賞を獲得。起業に惹かれたにこるは、プログラム終了から2日後には全国初の中学校起業部を創設した。学校の理解を得るための説明書や提案書も、すべて自分で作成した。
そして中学2年生の2024年5月、「生成AI EXPO in名古屋」の運営に参加したことから、にこるは「AI時代の教育」というテーマに興味をもち、その年の夏、14歳で個人事業主としてEdFusionを創業した。AIの使い方や活用法、AIとの向き合い方といった教育コンテンツを、小学生から社会人まで提供している。
ChatGPTだけでなく、Felo(対話型検索)、Napkin.ai(ビジネス画像)、にじジャーニー(画像)、suno(音楽)など、多様な生成AIツールを組み合わせて、小中学生が地域振興や防災マップの作成などを行うワークショップ等を展開している。
「テクノロジーが進化する時代に大事なのは、“AIと一緒に何を生み出せるか”です。だから、AIを通して、人だからこそできる課題解決へのチャレンジの場を提供しています」
クライミングで育まれた“やってみる力”
では、彼女の行動力や挑戦心、推進力はどのように育まれたのか。原体験の一つが、小学校1年生のときに、商業施設の遊び場で出会ったスポーツクライミングだ。壁を登る感覚に夢中になり、やがて国民スポーツ大会(旧国体)の愛知県代表にも選ばれた。
「スポーツクライミングは、一つでも多くのホールド(石)に手をかけることで成績が上がります。だから次の手がないと思ってしまっても、とにかく手を出すことが大事。通っていたスクールでもコーチから『手を出せ』と言われ続けたのが、今の『まずはやってみよう』という姿勢につながっていると思います」
クライミングは、常にルートを自分で考え抜く必要があるため、試行錯誤しながら前に進んでいく姿勢も身についた。練習は大人たちと一緒で、この異世代交流によりコミュニケーション能力も育まれた。誰とでも抵抗なく話せるようになり、人前で話すのが好きになったという。

こうした経験から生まれたフットワークの軽さや、人とのつながりをつくる力はにこるの武器となっている。一つのイベントに参加すると何人ものキーパーソンと繋がり、そこから次の機会を生み出している。



