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2025.12.10 09:46

AIは気候変動問題の救世主となるか?エネルギー消費との両立が鍵

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Vishwanadham Mandalaはカミンズ社のデータエンジニアリングリーダーである。

2025年の終わりに近づく中、AI(人工知能)はもはや気候変動対策のための実験的ツールではない。この数年間で、AIは気候リスクの予測、送電網の最適化による脱炭素化の加速、産業効率の向上など、世界の気候戦略における重要な要素として台頭してきた。

AIは気候変動対策に大きな可能性を秘めている一方で、そのエネルギー消費自体が深刻な懸念材料ともなり得る。したがって、AIが地球にとって正味でプラスの力となるかどうかは、その計算能力をクリーンエネルギーの成長とどれだけ効果的に連携させられるかにかかっている。目標は、AIのエネルギーコストが、AIによって削減される排出量を上回らないようにすることだ。

世界の排出量:進展と異常

国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のCO2排出量は2024年に記録的な378億トン(Gt)に達し、0.8%の上昇を記録した。大気中のCO2濃度は422.5ppm(百万分の422.5)に達した。この数値は産業革命前のレベルと比較して約50%高い(NOAA地球監視研究所、2024年)。

これらの懸念すべき数字にもかかわらず、希望の兆しもある。2025年初頭には、石炭と比較して、風力と太陽光発電が合わせてより多くの電力を生み出した。IEA電力市場レポート2025年版によると、世界のエネルギー情勢におけるこの歓迎すべき変化は、中国とインドによる記録的な設備容量の追加によってもたらされたという。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化を1.5度に抑えるためには、2030年までに世界の排出量を45%削減し、2050年までにネットゼロを達成する方法を見つけなければならないと警告している。データ駆動型のイノベーションなしに、これらの極めて困難な目標に到達することは不可能だ。

事例研究

強化学習モデルを導入することで、Google DeepMindはデータセンターの冷却システムを自律的に最適化することに成功した。この導入の結果、冷却エネルギー消費が最大40%削減され、全体の電力使用効率(PUE)が15%向上した。

同様のAI駆動制御システムは、その後メタ、アマゾン、アリババなどの業界大手によっても採用された。IDCデータセンター持続可能性レポート2025年版とカーボンリーダーシップフォーラム(2024年)によると、これらの組織はAI駆動制御システムを通じて、年間推定500万メートルトンのCO2排出を回避している。これは現在までに、企業規模でAIによる具体的な排出削減の最も引用される実世界の証拠となっている。

AI駆動の気候ソリューションの推進

エネルギーグリッドの強化:AIは送電網の柔軟性、再生可能エネルギーの予測精度、障害検出を改善することで、よりスマートなエネルギーグリッドを実現できる。

建物とインフラの効率化シーメンス産業AI報告書2024年版で入手可能なシーメンスMindSphereのパフォーマンスデータによると、AI駆動の予測保守とプロセス最適化により、産業環境におけるエネルギー強度を15%から20%削減できるという。

マイクロソフト持続可能性レポート2024年版によると、同社のレドモンドとダブリンのキャンパスでは、プロジェクト盆栽の導入後、HVAC(暖房・換気・空調)のエネルギー使用量が30%削減された。これらの適応制御システムは、大きな資本支出なしにAIによって一般的な運用排出量を削減できることを明確に示している。

メタンの検出:地球温暖化の約30%はメタンに起因している。国連環境計画の世界メタン評価2021年版では、20年間の期間で見ると、メタンは地球温暖化においてCO2の80倍の効力を持つと警告している。

IEAメタントラッカー2025年版によると、2024年にはGHGSatやKayrros Methane WatchなどのAI駆動の衛星システムによって2000件以上の主要なメタン事象が検出された。これは前年比50%の増加を示しており、AIによる画像分析の最新の進歩によって可能になった。政府や石油大手は、このデータをコンプライアンスダッシュボードに統合することで、ほぼリアルタイムの漏洩対応を可能にすることができる。

今後の重要戦略

この記事を締めくくる前に、2025年以降のビジネスリーダーにとって重要だと考える戦略をいくつか共有したい。

まず何よりも、気候に対応したデータセンターが今まさに必要だと確信している。デロイトによると、データセンターが1%の自主的な使用制限を行うことで、126GWの送電網容量を解放できるという。これにより、ボトルネックを減らしながらクリーンな電化を加速できる。

また、今後はすべてのAI導入をエネルギー資産として扱うべきだ。ライフサイクルカーボン会計を実施することで、回避された排出量とエネルギー消費量を測定する必要がある。

もう一つの重要な戦略は、AIをESGガバナンスに統合することだ。AI駆動の持続可能性ダッシュボードはスコープ1から3までの排出量の可視性を高め、SEC気候開示規則やEU CSRD規則への準拠達成に役立つ。

最後に、物流や業務における気象関連の混乱を減らすのに役立つAIベースの気候モデルを通じてレジリエンスを構築することも強く信じている。

forbes.com 原文

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