北米

2025.12.10 12:00

「生活が成り立つかどうか」を問う「アフォーダビリティ」の危機が存在する20の兆候 米国

Raquel Natalicchio/Houston Chronicle via Getty Images

Raquel Natalicchio/Houston Chronicle via Getty Images

2025年の米国を覆う閉塞感。その原因の1つには、「アフォーダビリティ(Affordability)」の欠如がある。これは「購入能力」や「値ごろ感」を意味する単語だが、現在の米国では「収入に対して、生活に必要なコストが支払可能な範囲に収まっているか」、つまり「生活が成り立つかどうか」を問う指標として重く受け止められている。インフレ再燃により、中間層においてさえこのバランスが崩壊しつつあるのだ。

トランプ大統領はこの問題を軽視する姿勢を見せるものの、激戦州ペンシルベニアへの訪問を間近に予定するなど、政権運営への焦りも透けて見える。本稿では、米国全土に広がるこの「生活費危機」の現実を、20の具体的データから詳らかにする。

米国に「アフォーダビリティ危機」が存在する20の兆候

雇用が停滞し、インフレ率が加速する中、トランプは米国時間12月9日にペンシルベニア州を訪問し、経済政策を議論する予定だ。インフレ率は4月の2.3%から9月には3%へと上昇し、トランプは支持率の低迷と生活費負担への姿勢に対する反発に直面している。トランプは「アフォーダビリティ」という言葉を民主党による「でっち上げ」と呼んでいるが、NBCニュースの最近の調査によれば、有権者の66%が、インフレや生活費高騰への対策でトランプ政権は期待を下回っていると感じている。

食品価格の上昇と外食産業における明確な二極化が進行

1. 2025年の食品価格の上昇率は、過去20年の平均を上回る見通しだ。農務省(USDA)は、食料品価格が2.4%、レストランの食事が3.9%、食品全体の価格が3%上昇すると予測している。

2. 卵、砂糖、肉類(特に牛肉)といった主要食品の価格は2025年に上昇し、今後数カ月においても上昇が続くとUSDAは予測している。

ファストカジュアルから低価格チェーンへシフト

3. ファストカジュアル業態の銘柄は年初来で大幅に下落した。チポトレ・メキシカン・グリルは44.7%安、カバ・グループは52.5%安、スウィートグリーンは79.9%安、ウィングストップは14.7%安となっている。この動きについて、チポトレのスコット・ボートライトCEOは、消費者の予算が圧迫されていることが要因だと述べている。

4. 一方、低価格志向のファストフードチェーンは好調である。バーガーキング、ティムホートンズ、ポパイズ、ファイヤーハウス・サブズなどのブランドを擁するレストラン・ブランズ・インターナショナルは年初来で9.2%高、マクドナルドは6.5%高、ヤム・ブランズは6%高となっている。

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翻訳=江津拓哉

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