欧州

2025.12.10 09:30

ロシアが夜間のデータ通信を遮断、無人機攻撃に備え 住民からは不満も

ロシア軍の無人機によって破壊されたウクライナ東部ハルキウの建物で救助活動に当たる消防隊員。2025年11月12日撮影(Kharkiv Regional Military Administration / Handout/Anadolu via Getty Images)

ロシア軍の無人機によって破壊されたウクライナ東部ハルキウの建物で救助活動に当たる消防隊員。2025年11月12日撮影(Kharkiv Regional Military Administration / Handout/Anadolu via Getty Images)

ウクライナ侵攻では、携帯電話網が戦場となっている。ロシアでは夜間にモバイルインターネットサービスが停止されることに、住民が不満を訴え始めている。ロシアとウクライナはともに、携帯電話サービスを制限するか、敵軍に遠距離から精密な無人機(ドローン)攻撃を容易に指示するための手段を与えるかというジレンマを抱えている。他の国々もいずれ同じ問題に直面するかもしれない。

携帯電話を搭載した無人機

双方は、敵国の携帯電話網を利用して無人機の通信を行っている。技術自体は極めて単純だ。必要なのは、有効なSIMカードの入ったスマートフォンと、中国の無人機メーカーDJIの「セルラードングル2」のような150ドル(約2万3000円)程度の装置だけだ。これで、4G通信が可能な場所なら無人機をどこへでも飛ばすことができる。トランシーバーのように、無人機の直接無線制御は数キロに制限されるが、携帯電話網を使えば、ニューヨークにいながら東京で無人機を飛すことさえできるのだ。

この種の遠隔操作技術は、ウクライナ軍が6月に実施した「スパイダーウェブ」作戦で使用された。ウクライナ保安庁は事前に小型一人称視点(FPV)無人機を5つのロシア空軍基地付近までトラックで秘密裏に輸送していた。無人機はロシアの電話網を介して発射・操縦され、同国で少なくとも10機の戦略爆撃機を破壊した。

長距離通信が必要な場所では、同様のシステムが広く採用されている。ロシア軍が使用しているイラン製無人機「シャヘド」は当初は発射後放置型巡航ミサイルだったが、現在はカメラと4Gセルラーモデムを搭載し、操縦士が無人機の進路を追跡し、防空網を回避したり、目標へ誘導したりすることができるものもある。

この技術は最下層の戦術にも現れ始めている。ロシア軍は安価な固定翼無人機「モルニヤ」を運搬機として使用し始めた。各機は1~2機のFPV無人機を、前線の妨害帯を越え敵陣まで輸送している。妨害装置の範囲は通常わずか数百メートル程度で、重要な目標物の周辺に集中配置される。その上空を飛行すれば、無人機は自由に活動することができる。モルニヤは、ウクライナの携帯電話網を介して操縦士に接続するFPVを発射し、通常の操作システムをはるかに超える48キロ以上の射程で攻撃をすることができる。

一方、ウクライナ軍もFP1やFP2といった長距離攻撃用無人機からの動画を定期的に公開しており、これらもロシア側の民間の携帯電話網を利用している可能性を示唆している。

ロシアが夜間のデータ通信を停止

敵の無人機が自国の携帯電話網を利用するのを阻止することはできるのだろうか? ロシア当局は当初、海外でローミングサービスを利用した携帯電話に24時間の「クーリングオフ」期間を課した。この遮断は現在、72時間以上使用されていない全てのSIMカードに適用されるようになった。これはロシアで購入されたSIMカードをウクライナへ送る行為を摘発するのが狙いだ。

両国の国境地域の一部では、ロシア側が極端な措置を講じており、無人機攻撃が最も発生しやすい夜間にデータ通信サービスを停止している。これに対し、加入者からは苦情が寄せられている。

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翻訳・編集=安藤清香

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