食&酒

2025.12.17 14:15

フランスなら不法労働? 日本ワイン産業の「収穫ボランティア活況」はやりがい搾取か

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ワイナリーの方針はそれぞれ

労働力不足やサステナビリティの課題に向き合い、独自の解決策を打ち出すワイナリーも増えている。ここでは、方向性の異なる3つの取り組みを紹介したい。 

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1. コミュニティ共創型:奥野田ワイナリー(山梨)

“学びと体験”を“価値”に変える仕組みづくりの好例が、山梨・塩山市にある奥野田ワイナリーだ。同社は、農作業を軸にした年間会員制(会費制)のファン組織「OVC(Okunota Vineyard Club)」を有し、現在約200名が所属している。年7〜8回のプログラムでは、季節ごとの葡萄の生育ステージに合わせ、座学・作業の両面でぶどう栽培を学び、参加型の体験ができる。畑では経験年数を星マークで示す独自の仕組みも導入。

「7割近くが女性で、一人参加も多いのは、コミュニティの統制がとれた安心感ゆえ」とオーナーの中村雅量氏は分析する。季節を感じながら学び、仲間とともに作業し、ワイングラスを傾ける──いわば、ワインラバーが集う「大人のクラブ活動」ともいえるコミュニティは、少人数で運営するワイナリーの大きな力となっている。

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2. 農福連携型:カーブドッチワイナリー(新潟)

労働力の安定化と地域福祉の両立を図る好例が、新潟のカーブドッチワイナリーだ。かつては約200人規模の収穫ボランティア組織を運営していたが、悪天候による中止や運営上の課題から、より持続可能な仕組みへと転換した。2018年頃から本格化したのが、福祉事業者との農福連携である。現在は十数社と提携し、年間の延べ作業人数は約3,000人。その取りまとめも福祉事業者に委託し、対価を支払うことで、人数の平準化と運営の安定化を実現している。「ボランティアも非常に助かりますが、個人的には対価を支払う農福連携の方が、事業拡大に対応しやすい」と取締役の掛川史人氏は語る。 

3. テクノロジー活用型:都農ワイナリー(宮崎)

宮崎県の都農ワイナリーが位置する都農町は、短時間労働マッチングアプリ「タイミー」を運営するタイミー社と連携協定を結び、町ぐるみでスポットワークを推進している。同ワイナリーではスタッフの高齢化が深刻化した2024年からアプリを導入。農園補助や売店、イベントスタッフなど幅広い業務で募集を開始した。時給の1.3倍+月額300円を支払えば、事務処理や保険手続きはすべてタイミーが代行する仕組みだ。

サーフィンの聖地として知られる宮崎では若者の参加も多く、畑作業を体験したワーカーがファンとなり、契約社員に採用された例もある。一時的な労働力確保を超え、地域外の関係人口創出へとつながっている。

「ともにつくるワイン」へのデザインが鍵

農作業のボランティアは、参加者が「飲み手」から「当事者」へと一歩踏み込む場でもある。

大人の週末レジャーや家族の余暇として定着しつつあり、ワイナリーにとってはファンづくりや地域活性化のきっかけにもなる。やり方次第では、双方にメリットがあるといえる。だからこそ、持続可能な日本ワイン産業のためには、ボランティアに頼るかどうか、という二択ではなく、「ともにワインをつくる関係性」をどうデザインするかが問われているのではないだろうか。

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