暮らし

2026.01.13 14:15

年収200万でも幸せに暮らせる町に━━塩江町、目指すは「幸福なダウンサイジング」

コミュニティの知的強度を高めるために

コミュニティの知的強度を高めるためにトピカが力を入れているのが、地域住民が伝統的に受け継いできた生き方や技術の継承と保存、そして再評価することだ。阿波や土佐からの強い文化的影響と、中央構造線の北端に位置するという地理的な条件などから、塩江ではここならではの里山との付き合い方が育まれてきた。

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独特の花暦や急斜面の畑を耕す道具、また山道の切り拓き方など、それらは町民にとっては当たり前のことだが、町外の人からすると豊かで価値の高いもの。トピカではこうした伝統的かつ、この町で生きるための助けになる知恵を掘り起こし、時には発信することで、町民が町の魅力を再発見するきっかけを作っている。

写真提供:トピカ
写真提供:トピカ

その一つが、月に一度住民が集まり間伐をして道を整備する「里山づくり」だ。

「それまで放置していた木を切ると『材がもったいない』という意識が、みんなのなかに自然と生まれて、来年はその木で椎茸を作ろうとか急斜面に階段を作ろうとか、お弁当の時間に盛り上がります。町の人が昔の知恵を思い出し、知識の交流が生まれている。まさに地域の資源や魅力にみんなが気づいた証拠だと思います」

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一般的に会議室ではアイデアが多数出ても実現しないことは多いが、村山さん曰く「山で議論するとアイデアは少ないが実現率が高い」というのもおもしろい。地に足のついた話ができるのだ。里山づくりはもともと補助金を受けて始まったプロジェクトだが、交付期間が切れた後も、全員一致で続けることが決まったという。メンバーのモチベーションで結果的に事業が自走化したのだ。

言葉よりも体と手を動かす

こうしたトピカの活動理念には、歴史学や哲学に着想を得た村山こうしたトピカの活動理念には、歴史学や哲学に着想を得た村山さん独自の思想がある。しかし、町の人に対してはそれらの言葉を「出しすぎない」ように気をつけているという。

「町のビジョンに対して自分の言葉をもつことは大事ですが、それらを地域のなかでどう出すかには、かなり気をつけています。難しい単語を並べても引かれてしまうし、こうした小さな町では言葉よりもまず体と手を動かすことが重要だからです。あれこれ論じても、『そんなことよりまずそこの草刈ってくれよ』という世界です(笑)」

出身は、東北の人口500人足らずの村という村山さん。小さなコミュニティに入っていく難しさは前々より知っていた。もう一つ、塩江に来てから気をつけていることがある。

「地元のいさかいは知らないふり、ということでしょうか。小さなコミュニティには大抵派閥があるし、仲の悪い人もいます。もう5年も住んでいるので大体把握していますが、よそ者としてあえて知らないふりをします。すると、いつの間にか私が2者の橋渡し的な立ち位置になることがあって。そこがよそ者としての私の大事な役割だと思っています」

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