新しい研究によると、私たちの目はこれまでの推定よりもはるかに細かいディテールを識別できる可能性があるが、そのことは必ずしも超高解像度テレビに高い価値があることを意味するわけではない、とScienceAlertは伝えている。この研究は、ケンブリッジ大学とMeta Reality Labsの研究者によって行われたものだ。
チームは、19世紀から使われてきたスネレン式視力表ではなく、現代のディスプレイ技術を用いて人間の目の真の解像能力を測定しようとした。研究者たちは13歳から46歳までの18人のボランティアを対象に、さまざまな色、距離、視角で高精度の視覚パターンを提示した。参加者がパターンの細い線を識別できれば、それはそのピクセル密度の細部を目が解像できていることを意味する。
その結果、人間の目は長年基準とされてきた「1度あたり60ピクセル」よりも多くのディテールを知覚できることがわかった。グレーでは上限が「1度あたり94ピクセル」に達し、赤と緑では約89ピクセルだった。しかし黄色と紫では限界が大きく低下し、約53ピクセルにとどまった。このばらつきは、光の波長によって網膜や脳がそれを処理する方式が異なるためだという。
この発見は、超高精細テレビが「高解像度であればあるほど良い」とは限らない理由も説明する。一般的なリビングの距離では、平均的なサイズの4Kや8Kテレビの全ピクセルを識別できる視聴者はほとんどいない。実際には、44インチの4Kや8Kの画面は、よほど近くに座らない限り、2K画面とほとんど同じに見えることが多い。
研究者たちは、ディスプレイメーカーは、人間の大多数が実際に識別できる視力に合わせて画面を設計した方が得策かもしれないと主張している。人間の視覚が完全に利用できないほどの超高解像度を追い求めるよりも、網膜の見え方に合わせて画像にフィルターをかけることで、ピクセル数を増やす以上に鮮明さを改善できることも示された。
またこの研究は、色の知覚の限界についても明らかにしている。私たちの目自体はそれほど優れたセンサーではなく、実際に見えていると感じる多くの情報は脳が再構築しているものである。特に周辺視野では色の細部を処理するのが苦手だ。
これらの結果は、人間の視覚は生存に十分なレベルに進化したのであって、現代の高精細ディスプレイと同等の精密さを持つよう設計されてはいない、という大きなポイントを裏付けている。研究成果は Nature Communications に掲載されている。
(この記事は、英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」から翻訳したものです)



