2. マネージャーは、文化的な変革の先導者になる
チェンジマネジメントでは、変革のプロセスとスケジュール、導入の進捗度合を示す指標が中心となる。文化的な変革では、個々の役割や意義、従業員が価値をどう理解するかが中心となる。
AIを導入すると、それを機にアイデンティティに変化が起きる。かつては人間が何時間もかけて行なっていた作業を、ツールがほんの数秒で完了させるようになると、役割や価値、適応性を巡って、自分の存在意義を問うようになる。こうした疑問が生じたときには、単に研修を行うだけでなく、リーダーシップのスキルが必要になってくる。
この場合に優先すべきは、次の3つだ:
・学び続けることを習慣にする:スキルは、かつてないほどの速さで陳腐化しつつある。マネージャーは、学びをたった1度の取り組みではなく継続すべきものとみなす姿勢を示し、「自分にはまだ知らないことがある」と認めても安全でいられる職場環境を整えなくてはならない。
・価値とは何かをとらえ直す:AIが導入されても自分たちの価値が下がるわけではない、と従業員が理解できるよう取り計らおう。変わるのは価値が創造される方法であり、重点は、判断力や創造性、関係構築のほか、機械にはまだ再現できない類いの文脈的理解へと移っていく。
・従業員の感情的現実に配慮する:これだけの変化を前にすれば、不安や抵抗感、恐怖を覚えるのは当然だ。そうした感情を受け止められるマネージャーこそが、よりレジリエントなチームを構築できる。
3. マネージャーは、人間とAIの協力体制の設計者になる
働き方の未来は、人間vs機械という構図になるわけではない。それよりも、ハイブリッド型インテリジェンス、つまり、AIのスピードならびに精度と、人間の共感力、判断力、創造力を組み合わせたものとなる。この組み合わせをうまく機能させる方法を見つけ出した職場こそ、最も成果を上げられるようになるだろう。
こうした体制の設計において、特に重要度の高い原則は次の4つだ:
・意思決定権の所在を明確にする:マネージャーは、誰が(AIか、それとも人間か)、どの状況で最終的な決断を下すのかを定めるべきだ。意思決定の線引きを明確にすることで、混乱や不満、ミスを防ぐことができる。
・それぞれの強みを中心にして、ワークフローを再設計する:AIが得意とするのは、パターン認識、データ処理、反復的タスクだ。一方の人間は、文脈や微妙な差異の理解、関係性の力学といった面で力を発揮する。目指すべきは、仕事を構造化して、それぞれが自らの得意分野で機能できるようにすることだ。
・フィードバックループを構築する:AIシステムは、フィードバックを与えると改善されていく。ただしそれは、人間がフィードバックを提供できる場合に限られる。マネージャーは、従業員がエラーを報告したり、改善案を提案したり、AIツールの活用法を改良したりできるような仕組みを整えなくてはならない。
・AIへの過剰な依存を防止する:人間が判断した方がより良い結果につながる場合であっても、AIの提案に過度に従ってしまう、という状況は実際に起こり得る。従業員がAI使用を前提とせず、健全な疑問をもつ姿勢と批判的思考を養えるかどうかは、マネージャー次第だ。


