マネージャー(中間管理職)は何かにつけて過小評価されているが、AI(人工知能)の導入にあたっては決定的な役割を担っている。
MITスローン・マネジメント・レビューによると、大企業のデータ部門リーダーのうち、データ主導型の組織へと移行する際の主な障害として「文化的な課題とチェンジマネジメント(変革管理)」を挙げた者は91%に上った。一方、こうした障害として「技術的な課題」を挙げたリーダーはわずか9%にすぎない。
AIの導入は技術的な問題として扱われているが、本質的には人間にかかわる課題だ。AIが実験的なツールから、事業インフラへと変わっていくなかで、マネージャーは、準備が追いつかないほどのスピードで進む変革に直面している。
来たる2026年に成功を収められるリーダーは、機械学習の専門家ではない。AIが人間の仕事をどう改革するのかを正確に把握し、チームが変化を乗り切っていけるよう、明確さと共感、謙虚さをもって導いていける人物だ。
以下では、AIが2026年にマネージャーの役割をどう変えていくのか、5つのポイントとともに説明していこう。
1. マネージャーは、大きな枠組みで倫理的な意思を決定する人間になる
AIシステムは日々、無数の小さな意思決定(マイクロ・ディシジョン)を下し得る。例えば顧客の優先付けやリソース配分、ワークフローの最適化、従業員に与えられる機会といった、人々の生活やキャリア、組織との関わり方に直接的な影響を及ぼすことのある決定だ。
マネージャーに求められるのは、次の3つの重要分野に力を入れることだ:
・偏見を見つけ出して拡大を防ぐ:AIシステムは、過去のデータを学習している。ということは、現行の偏見を機械的な速さで増幅させる可能性があるわけだ。従ってマネージャーは、偏見が生じる段階を把握し、生身の人間が確認するチェックポイントを設けて、その偏見を突き止めなくてはならない。
・AIの判断を無効にする判断力をもつ:すべての意思決定をAIに任せて自動化すべきではないし、AIが下した決断が最終決定としてふさわしいとは限らない。つまりAIの提案が、会社の価値観や顧客のニーズ、基本的な公正さと合致しない場合に、それを見極める判断力と、介入する権限が必要だ。
・説明責任の枠組みを整える:マネージャーは、AIシステムが機能しなかったときに備えて、責任の所在を明らかにし、使用ツールの倫理的影響をチームメンバーが理解できるよう取り計らわなくてはならない。



