時計

2025.12.24 11:00

150年の伝統と、次世代との対話がつくり出す未来 オーデマ ピゲが掲げる“人中心のブランド経営”

共創によって価値は豊かになる

レスタは顧客を「学びのパートナー」と語る。初の公式来日となった今回、日本市場を「創造性の供給地」と表現した理由もそこにある。

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「日本のお客様は、時計の内部に宿る“理由”を理解しようとしてくださいます。歴史も構造も、対話を通じて深く知ろうとされる。その姿勢に、私たちは刺激を受けるのです」

こうした視点から2023年に誕生したのが、表参道の「AP LAB Tokyo」だ。ゲームを通じてウォッチメイキングの魅力に触れられる世界唯一の施設で、未来の顧客に向けた“体験の入り口”でもある。

「若い世代の問いや驚きは、私たちの想像を押し広げてくれます。教えるだけでなく、学び合うことで新しい価値が生まれる。それが共創です」

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ブランドと顧客が同じ未来を見つめるとき、時計は“物質”から“物語”へと変わる。その瞬間を、レスタは大切にしている。

サステナビリティと透明性がつくる未来

そしてもうひとつ、レスタがブランドのアイデンティティとして重視しているのが、「人と文化に根差したサステナビリティ」だ。レスタは顧客の信頼を「伝統を語るブランドの土台」と位置づける。

「伝統を語るブランドである以上、未来に対しても責任を負わなければなりません。透明性こそが、これからのラグジュアリーを支える価値なのです」

産地が明確な宝石の採用や環境負荷低減の取り組み、リサイクルゴールドの活用。さらに失われつつある技法を継承する教育機関の支援にも力を注ぐ。これらはすべて、「技の未来」を守るための長期戦略だ。信頼は一朝一夕では育たない。誠実な行いが積み重なった先にだけ、人々の心に残る“記憶”として存在する──レスタの言葉からはそんな確信が感じられた。

現在銀座で開催中の150周年記念「ハウス オブ ワンダーズ展」は、レスタの理念そのものだ。“驚き”をテーマに、歴史・技術・職人の物語をエモーショナルに紹介する没入型展示。アーカイブから最新作までが並び、来場者は150年の“時間の旅”を味わうことができる。伝統を継承するだけでなく、文化そのものへの好奇心を育てていく―。オーデマ ピゲは150年を超え、次の“時間”へ歩み出した。

「ハウス オブ ワンダーズ展」

オーデマ ピゲが150年にわたり築いてきたクラフツマンシップ、革新性、そして人々の物語を紹介する創業150周年記念の特別展。
・開催期間:2025年11月10日(月)〜2026年4月30日(木)
・時間:11:30~19:30/最終入場18:30
・住所:東京都中央区銀座6-7-12
・入場無料/予約優先
・予約はこちらから

問い合わせ:特別展事務局
03-6830-0025


イラリア・レスタ(Ilaria Resta)◎イタリア・ナポリ出身のイラリア・レスタは、P&Gやフィルメニッヒ社で30年近くグローバルブランドを牽引。2024年よりオーデマ ピゲCEOとして、伝統と革新を融合させ、組織と人材の力を最大化するリーダーシップを発揮している。

Text by Nanae Ito | Photographs by Akira Maeda | Edited by Akio Takashiro

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