時計

2025.12.24 11:00

150年の伝統と、次世代との対話がつくり出す未来 オーデマ ピゲが掲げる“人中心のブランド経営”

「オーデマ ピゲ」CEOのイラリア・レスタは、グローバルブランドで長く活躍した経営者だ。初来日の場で彼女が語ったのは、「人と文化を中心に据える」ブランド経営の未来だった。


かつて大手フレグランスメゾン、フィルメニッヒ社で同社初の女性プレジデントを務めたイタリア・ナポリ出身のイラリア・レスタ(以下、レスタ)。約30年にわたるグローバルブランド経営で培った経験を、いかに時計業界で発揮していくのか。インタビューでは、伝統を守りながらブランドを未来へ導こうとする彼女の揺るぎない意志が伝わってきた。

レスタが描く未来像は明確だ。伝統的な時計づくりの世界で受け継がれてきたサヴォアフェール(職人技)と企業のアイデンティティを尊重しつつ、次の150年に向けて組織を前進させる。次の時代へ歩み出すための羅針盤は徹底した「顧客ファースト」の実践だ。

物語と学びを通じたブランド体験

その推進に向けて、レスタがまず語ったのは「人がブランドを動かす」という信念だった。歴史を大切にしながら、変革を積極的に取り入れる姿勢を、彼女はリーダーに求めている。

「リーダーに最も必要なのはアジリティ(俊敏性)とラーニングアビリティ(学ぶ力)です。歴史を守るだけでは、ブランドは過去に閉じ込められてしまいます。伝統を携えながら、変化を恐れず学び続ける。それがオーデマ ピゲの精神です」

変革の成果はリテール戦略に顕著に現れているという。ブティックを“販売の場”から“発見の場”へと進化させ、クラフツマンシップを体感できる空間と再定義したからだ。

「職人にとって作品は“わが子”。その時計を身につけてくださるお客様の姿こそが喜びです。お客様もまた、職人技や哲学に心を動かされ選んでくださるのです」

つくり手と使い手が感情でつながる──オーデマ ピゲの「体験型ラグジュアリー」は、こうした循環を生み出しているのだ。

レスタ着用の腕時計は、新作「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ フライング トゥールビヨン オープン ワーク」。41mmケースに新開発の自動巻きキャリ バー2980を搭載し、快適で直感的な使用感を実現。 オープンワークとトゥールビヨンの高度な技術を体 現し、ブラックセラミックと18Kピンクゴールドの大 胆なツートーンがスケルトンムーブメントに奥行きと 美を与える。伝統と革新が融合した、現代オートオ ルロジュリーの象徴的タイムピースだ。
レスタ着用の腕時計は、新作「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ フライング トゥールビヨン オープン ワーク」。41mmケースに新開発の自動巻きキャリバー2980を搭載し、快適で直感的な使用感を実現。オープンワークとトゥールビヨンの高度な技術を体現し、ブラックセラミックと18Kピンクゴールドの大胆なツートーンがスケルトンムーブメントに奥行きと美を与える。伝統と革新が融合した、現代オートオルロジュリーの象徴的タイムピースだ。

性能と美を両立させる進化

150周年を記念して発表されたパーペチュアルカレンダーウォッチは、「体験型ラグジュアリー」の中心に据えられたオーデマ ピゲの卓越した技術力と革新性を象徴するモデルだ。人間工学に基づき、伝統的な複雑機構を直感的で簡単な操作を可能にした“オールインワン”リュウズを搭載した新ムーブメントを開発。機械式時計の価値を150年間守り抜いてきた同社のDNAを、顧客体験向上へと見事に昇華している。

素材開発も積極的に進む。セラミック、カーボン、新合金「サンドゴールド」──どれも単なる素材ではなく、「文化を更新するための選択肢」として扱われている印象だ。“性能と美の両立”という哲学は、今も深化を続けている。

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Text by Nanae Ito | Photographs by Akira Maeda | Edited by Akio Takashiro

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