起業家

2025.12.11 13:00

元バレリーナ、29歳で世界最年少の女性ビリオネアへ 「予測市場」創業の起業家

Photo Illustration by Thomas Fuller/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

規制当局を提訴する賭けに出て、選挙市場の解禁を勝ち取る

しかし、規制との闘いはここで終わらなかった。Kalshiは2023年に翌年の大統領選を控え、選挙関連の取引の承認を申請したが、CFTCはこれを「ギャンブルに近い」として却下した。この時、CFTCを提訴するというアイデアを思いついたのはロペス・ララだった。「会社の他の投資家たちは皆、それはひどいアイデアだと言った」とパルトビは振り返る。しかし、2人はとにかく提訴に踏み切った。

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2024年9月、米連邦地方裁判所の判事はKalshiの主張を認める判断を下した。これにより、同社は100年以上ぶりに米国で合法的な選挙への賭けを提供する企業として歴史に名を刻むことになった。「私たちは世界最大の金融プラットフォームを作るという構想を持っていたからこそ、正しい手続きで進めることにこだわった。合法であることは、どんな状況でも譲れない条件だった」とロペス・ララは語る。

大統領選が近づくにつれ、Kalshiにおける候補者に関する賭けの総額は5億ドル(約775億円)を超え、同社のユーザーはトランプの勝利を正しく予測した。Polymarketでも総額36億ドル(約5580億円)が投じられ、こちらも同じ結果を見抜いていた。

a16zのパートナー、アレックス・イマーマンは、ロペス・ララの不屈の精神はバレリーナ時代に培われたものだと語る。「プロのバレリーナほど、“ノー”を突きつけられても前に進み続ける力を試される仕事はない。少しのけがや短い休養でさえ、居場所を失いかねない世界だからだ。彼女はその厳しい環境の中で、しなやかな粘り強さを早くから身につけた。その経験をKalshiの事業づくりにも生かしている」と彼は話した。

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選挙後も提携により成長を続ける一方、州規制が課題

大統領選が終われば勢いが鈍るのではないかという当初の懸念とは裏腹に、Kalshiは「取引量は前年比で1000%増に達し、現在は週に10億ドル(約1550億円)を超えている」と説明する。選挙後、同社はロビンフッドやウェブルなどの証券アプリと連携を進め、最近では全米アイスホッケーリーグ(NHL)やオンラインマーケットプレイスのStockX、Google Financeなど多様な企業との提携を相次いで結んだ。ドナルド・トランプ・ジュニアは1月にKalshiのアドバイザリーボードに加わっている(彼は2024年9月にPolymarketのアドバイザリーボードにも参加した)。

Kalshiは、競合のPolymarketに対抗するため、暗号資産分野にも本格的に乗り出しており、12月には、ブロックチェーンのソラナ上でも予測市場の提供を開始した。今回の資金調達で得た資金は、証券アプリとの連携拡大や、ニュース媒体との新たな提携に充てる予定だと同社は説明する。

ただし、課題も残る。現在の取引量の9割以上をスポーツ関連が占める中、州政府はKalshiのスポーツ関連の賭けが「州レベルではギャンブルとして規制・課税されるべきだ」と主張し、連邦規制下にある同社に法的対応を取り始めている。それでも、かつては不可能と思われた規制上の壁を乗り越えてきたKalshiの実績を知る、投資家の期待は揺るがない。これまで1000社以上に投資してきたサイベルは、「私たちが手がけてきた企業の中でも、これほど世界に大きな影響を及ぼす可能性を持つ会社は他にない」と語った。

※編注:本稿は情報提供のみを目的とするものであり、特定の暗号資産や特定サービスの利用を推奨するものではありません。

・日本の場合、暗号資産や独自トークンを業として取引する行為は、日本の金融庁・財務局に登録した暗号資産交換業者が行えます。登録がない暗号資産交換業者において、暗号資産を取引することは推奨しません。暗号資産を取引する際は、金融庁が公開している「暗号資産交換業者登録一覧」をご確認ください

・日本では、選挙・スポーツ・経済イベントを対象とする賭けを含め、オンライン上で行われる賭博行為は、刑法上の賭博罪などの対象となる犯罪とされています。海外で合法的に運営されているサービスでも、日本国内から接続して賭博を行えば賭博罪などに問われる可能性があります。運営者は賭博開帳図利罪など日本の刑法に問われ、刑事責任を負う可能性があります。また、広告・宣伝や決済に関与すると賭博幇助などに問われる場合があります。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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