露光中に最大92基の衛星が写り込む
NASAエイムズ研究センターのアレハンドロ・ボルラフ率いる研究チームは、衛星からの反射光が地球低軌道(400~800km)を周回する宇宙望遠鏡にどのような影響を及ぼすかをシミュレーションした。なお、スペースXによるとスターリンク衛星は高度550kmの軌道を周回している。
シミュレーションに用いた宇宙望遠鏡は、以下の4つだ。
• NASAのハッブル宇宙望遠鏡
• NASAが今年打ち上げた宇宙望遠鏡SPHEREx(スフィア・エックス)
• 欧州宇宙機関(ESA)が計画中のARRAKIHSミッション
• 中国が開発中の巡天空間望遠鏡(Xuntian/CSST)
研究の結果、ハッブルの画像の約39.6%に衛星の光跡が入り込むと予測され、残る3つの宇宙望遠鏡では画像の96%が汚染されるとみられることがわかった。1回の露光中に画像内に写り込む衛星の平均数を算出したところ、ハッブルが2.14基、SPHERExは5.64基で、ARRAKIHSは69基、巡天望遠鏡では92基にも上った。
研究チームによると、軌道高度が約450kmと低い巡天と、長時間露光・広視野角のARRAKIHSは、ハッブルと比べて特に影響を受けやすいという。
影響を最小化するには
研究論文は、商業的ニーズと科学研究の保護を両立させる戦略を策定するため、宇宙機関、衛星運用企業、天文学者による国際的な連携・調整が必要だと訴えている。衛星がもたらす悪影響を最小限に抑えるための有望な対策として、科学望遠鏡の運用軌道より低い軌道に衛星を展開し、衛星が望遠鏡の視界を横切る確率を下げることを研究チームは提案している。
低軌道衛星がハッブルの天文観測に影響すると指摘する研究結果は、これが初めてではない。2023年に科学誌ネイチャー・アストロノミーに掲載された論文では、2002~21年に撮影されたハッブルの画像の2.7%に人工衛星の軌跡が写り込んでいたことが判明している。


