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2025.12.09 18:00

「F1チーム」評価額ランキング 2025年版、首位フェラーリは1兆円

Photo by Clive Mason - Formula 1/Formula 1 via Getty Images

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世界の投資家がF1への投資に殺到する中、主要10チームの評価額の平均は36億ドル(約5580億円。1ドル=155円換算)に達している。上位チームの価値は一部のNFLやNBAのチームをも上回る。

メルセデス代表による持ち株一部の売却協議において、評価額約9300億円とされる

11月中旬、メルセデスのF1チーム代表でビリオネアのトト・ヴォルフが、持ち株の一部をサイバーセキュリティ大手クラウドストライクの共同創業者ジョージ・カーツに売却する協議の最終段階に入ったと報じられた。チームの評価額は、過去最高の60億ドル(約9300億円)に達したとされた。この金額は、F1が投資マネーを引き寄せる次の段階に入ったことを示す、これ以上ない明確なサインとなった。

ヴォルフが同意したとされる60億ドル(約9300億円)という評価額は、フォーブスの2年前の推定額から58%の上昇で、メルセデスのF1チームを、世界のあらゆる競技チームの中でも最も価値ある存在の1つに押し上げた。同チームの価値は、NFLの8チームやNBAの24チーム、MLBの28チーム、NHLの全32チームを上回り、欧州サッカーにおいても、レアル・マドリードとマンチェスター・ユナイテッド以外のすべてのクラブを凌いでいる。

評価額トップは最も伝統あるフェラーリ、その価値は約1兆円に到達

しかも、メルセデスのチームの価値は、F1のトップではない。フォーブスの推計によれば、F1界の先頭に立つのは、最も伝統あるフェラーリで、その価値は65億ドル(約1兆円)に達している。

F1に投資資金が流入する中、10チームの評価額はいずれも15億ドル(約2325億円)を超えた。2年前にこの水準に達していたのは4チームのみで、現在の平均評価額は36億ドル(約5580億円)と、2023年比で89%増となった。

「F1チーム」評価額ランキング 2025年版

1位 フェラーリ:評価額65億ドル(約1兆円)

2位 メルセデス:60億ドル(約9300億円)

3位 マクラーレン:44億ドル(約6820億円)

4位 レッドブル・レーシング:43億5000万ドル(約6743億円)

5位 アストンマーティン:32億ドル(約4960億円)

6位 ウィリアムズ:25億ドル(約3875億円)

7位 アルピーヌ:24億5000万ドル(約3798億円)

8位 ザウバー:24億ドル(約3720億円)

9位 レーシング・ブルズ:23億ドル(約3565億円)

10位 ハース:15億ドル(約2325億円)

※チームの順位などの動向は、英語版記事公開日の11月20日時点のもの。金額は1ドル=155円換算

評価額が上昇した背景は、「コストキャップ制度」導入による収益性の改善

評価額の上昇には、F1ビジネスの収益拡大が寄与している。10チームの昨年の平均売上は推定4億3000万ドル(約667億円)で、複数年にわたり2桁の年率成長が続いた。メルセデスの2024年売上は過去最高の7億9900万ドル(約1238億円)となり、同時期の世界のスポーツチームの中で10位に入った。

一方、評価額を押し上げたより大きな要因は収益性の改善だ。2021年に導入されたチームの支出に上限を設ける「コストキャップ制度」により、今季のマシン開発や製造に関する支出はおよそ1億7000万ドル(約264億円)に抑えられた。この制度は、年間4億ドル(約620億円)超を支出していた上位チームと下位チームとの格差縮小を目的としていた。

支出管理が進み2024年は6チームが黒字を確保、利益水準が高まる

支出管理が進んだことで、フォーブスの推計では昨年6チームが黒字を確保した。赤字にとどまるチームについても「1件から3件のスポンサー契約で黒字化できる水準にある」との見方がF1関係者から出ている。2018年に1億3700万ドル(約212億円)の赤字を計上したマクラーレンは、2024年に6100万ドル(約95億円)の営業黒字を確保した。メルセデスの営業利益は2億200万ドル(約313億円)となり、高い収益性を持つスポーツチームの1つとなった。

投資家の関心が強まり、売上高に対する評価倍率も上昇

収益基盤の改善を受け、投資家の関心は一段と強まっている。レッドブルはレッドブル・レーシングとレーシング・ブルズの2チームを保有するが、ジュニアチームであるレーシング・ブルズは23億ドル(約3565億円)規模の買収提案を拒否したとされる。メルセデスの持ち分売却では前季売上の約7.1倍で評価されたとみられ、最近成立した他の3件のF1関連取引も同様に高い倍率となっている。

マクラーレン親会社、評価額約6975億円の条件で少数株主の持ち分を買い取り

2025年9月、マクラーレンのF1チームに加え、インディカーなど複数カテゴリーのチームを擁するマクラーレン・レーシングの親会社は、評価額を約45億ドル(約6975億円)とする条件で少数株主の持ち株を買い取った。この評価額は、グループの2024年売上の6.4倍に相当する。フォーブスの推計では、このうちF1チームが44億ドル(約6820億円)を占める。

この取引に先立ち、アストンマーティンでは2件の少数株売却が行われた。1件目は昨年の取引で、評価額は、前季売上の7.4倍の約23億ドル(約3565億円)だった。2件目は2025年7月に成立した取引で、評価額は前季売上の8.6倍の約32億ドル(約4960億円)とされた。比較のために挙げると、2023年の別のアストンマーティンの少数株売却の評価額は、約12億ドル(約1860億円)で、倍率は5.3倍にとどまった。同年のアルピーヌの少数株売却の評価額は約9億ドル(約1395億円)で、倍率は2.8倍だった。

フォーブスによる最新のF1全10チームの推定評価額は、直近年度の平均売上の約8倍となり、2019年の2.3倍、2023年の4.9倍から大幅に上昇した。

「評価額が大きく伸びているのは事実だが、市場がそう動いているだけだ。最終的には、その状況を受け入れるほかない」と、あるF1投資家は語った。

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翻訳=上田裕資

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