欧州

2025.12.09 12:30

ロシアがシャヘド無人機に空対空ミサイルを搭載 迎撃ヘリの脅威に

ロシア軍のシャヘド型ドローン(無人機)の残骸から見つかったR-60短距離空対空ミサイル。ウクライナの電子戦専門家セルヒー・「フラッシュ」・ベスクレストノウが通信アプリ「テレグラム」に投稿した画像より

モルニヤ(現ビンペル)R-60、北大西洋条約機構(NATO)のコードネーム「AA-8エイフィド」は、もともとは1970年代にジェット戦闘機に搭載されていた短距離空対空ミサイルである。目標のエンジンの排熱などを追尾する赤外線誘導方式で、射程は8kmある。近接信管を備え、目標に近づいた段階で起爆する。3kgの弾頭は連続ロッド式で、連結された鋼鉄製のロッド(棒)が展開して大きな輪となり、航空機を切断できるほどの速さで飛散する。

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R-60は空対空ミサイルとしては最も軽量な部類に入るものの、それでも発射レールと合わせると45kg以上ある。シャヘドにとっては相当な追加重量だ。おそらく、ミサイルを搭載するシャヘドは通常の弾頭は搭載しないのだろう。つまり、ミサイルで武装したシャヘドは対地攻撃能力を持たず、航空機に対抗する「護衛戦闘機」の役割を担うと考えられる。

もっとも、ドローンの操縦士がミサイルの照準を合わせるのは、たとえ通信状況が良好でもかなり難しいはずだ。シャヘドは空中格闘戦(ドッグファイト)をするような機体ではなく、長時間の飛行用に設計されており、機動性は限定される。空域に敵機が存在すると警告された場合、操縦士は、ドローンの機首を振ってミサイルの狭い視野内に目標を捉え、その状態を維持してミサイルがロックオン(自動追尾)するのを待つ必要がある。これは、ヘリコプターのような低速の目標なら可能かもしれない。

短距離の赤外線誘導ミサイル自体は非常に高い効果を発揮し得る。たとえばR-60の米国版にあたるサイドワインダーは、実戦で80%の撃墜率を記録した事例がある。とはいえ、そのサイドワインダーも、以前のモデルでは撃墜率が10%程度だった事例もあり、シャヘドに搭載されたR-60の撃墜率はむしろこちらに近いものになるかもしれない。また、赤外線誘導ミサイルのなかには、ヘリコプターなどの航空機から発射される赤外線フレアによって容易に欺かれるものもある。

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ミサイル搭載ドローンの狙いと対抗手段

ドローンが空対空戦闘のために武装されたのは今回が初めてではない。米軍はかつて、プレデター偵察ドローンにスティンガーミサイルを搭載したことがある。ただ、唯一知られている交戦である2002年の戦闘では、イラク軍のMiG-25戦闘機にあっけなく撃墜された。2021年には、イランがアーザラフシュ(雷電)ミサイルを搭載したドローンを公開し、試射も行っている。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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