アパレル業界の大量生産・使い捨てが問題視される昨今。先駆的に用品の修理・補修に力を入れてきたアークテリクスの新店舗が体現するのは、サステナビリティを徹底する彼らの哲学だ。
「今回出店した池袋は、秩父山地へのアクセスが良好で、アウトドアの愛好家が集う土地です。だからこそ、プロダクトを販売するだけではなく、お客様のアウトドア活動をサポートするサービス体制が整った店舗にしたかった。そういったプロダクトとサービスを含めた、いわばアークテリクスのフルスペックがこのワンフロアで揃うのが、今回のストアなのです」
こう話すのは、日本で「アークテリクス」のブランドヘッドを務める高木賢だ。同ブランドは1989年、カナダ・バンクーバーにて創業。クライマーが自らつくる高品質なクライミングギアブランドとしてスタートし、バックパックやウェアなどラインナップを徐々に拡大。現在ではカナダを代表するアウトドアブランドへと成長した。そんな同ブランドが今秋オープンさせたのが、国内最大級となる「アークテリクス 池袋東武ブランドストア」だ。その目覚ましい躍進の原動力である、世界中のアウトドアファンが信頼を寄せる高機能なプロダクトは、どのように生まれるのだろうか。
優れたプロダクトを生み出す 使いたいモノをつくるという哲学

「アークテリクスの本社にはデザインセンターがあり、アクティビティ別にデザイナーがいます。彼らは担当するアクティビティを自ら実践、サンプルをテストし、改善することで製品を完成させます。創業時より自社工場を所有しており、現在も本社近くにARC’One(アークワン)という自社工場を構えています。こうした充実の体制こそ、妥協なき製品開発の背景なのです」
欧米のアウトドアブランドには、プロダクトデザインを専門業者に外注するブランドも少なくない。だが、アークテリクスは創業以来、自社内でのデザインを貫く。それは“自分たちで使いたいモノをつくる”という、創業の礎となった哲学に基づいているのだ。見た目だけの装飾性や流行とは一線を画す、そうした確固たる信念こそが、信頼に足るプロダクトを生むのである。さらにアークテリクスにはもうひとつ、製品開発の指針となる哲学があると、高木は言う。
「アークテリクスは常に長く使えるプロダクトづくりを目指しており、その哲学を表すのが“Design to Last”という言葉です。例えばレインウェア用の素材は、現在は多くの種類があります。そのなかでもゴアテックスを採用するのは、耐久性に最も優れた防水・透湿性の素材だからです。そうした素材選びに限らず、使用する部材を1種類にし、シンプルなデザインにするなど、現在ではデザインの段階からリペアをしやすいように工夫されています。それもプロダクトを末長く使っていただくためなのです」
こうしたプロダクトを長く使うという哲学は、新店に設けられた「ReBIRD™ サービスセンター」に集約されている。同センターでは破損したウェアやギアのリペア受付をはじめ、アフターケアといったプロダクトの寿命を最大化するための総合的なプログラムを案内。設置された洗濯・乾燥機により、ウォッシュサービスや正しい洗濯方法のレクチャーも受けられる。それもまたプロダクトの寿命を延ばすためだという。

「“機能性が損なわれるため、ゴアテックス アパレルは洗わないほうがいい”といった話を耳にしますが、それは誤解です。実際には、洗わないと汚れや油分で繊維が寝てしまい、逆に撥水性が落ちてしまうのです。そればかりか、生地の構造自体に劣化が起こり、機能回復の基準に満たなくなることで、修理をお受けできないケースがあります。だからこそ、洗濯を含めた正しいアフターケアが重要なのです」
最後まで使いきることがサステナビリティへとつながる
プロダクトの販売だけでなく、日ごろのアフターケア、さらには破損後のリペアに至るまで一貫してサポートする。そんな手厚い体制が同店には整えられているのだ。それはまさに“Design to Last”=最後まで使いきるために他ならないのである。
「我々はウェア類も含め、すべてのプロダクトをアウトドアで使用する“ギア”ととらえています。ギアである以上は正しく機能することが重要で、日ごろのメンテナンスが大切です。新店のReBIRD™ サービスセンターでも、何より機能の回復を重視しています。正しいメンテナンスをしながら、プロダクトを長く使ってもらうこと。それがアークテリクスのサステナビリティに対する考え方でもあるのです」
同店ではサービスセンターに加えコミュニティスペースも設けられており、アークテリクスが主催するアウトドア関連のイベントやツアーなどの情報も今後発信していくという。高機能なプロダクトとともにアウトドアへの第一歩が踏み出せる同店より、新たな冒険へと出かけてみてほしい。


アークテリクス
https://arcteryx.jp


