作品販売も展覧会企画も CCCがアートラボ事業で「生活提案」を強化

銀座 蔦屋書店(展示作品/石神雄介)

展覧会の企画も、海外アートフェア進出も

日本のアート市場は世界全体の約1%と言われる。GDP規模や富裕層の人口から考えれば、もっとポテンシャルがあってもいいはずだ。

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「僕らは『1%市場で頑張ろう』とは思っていない。市場自体を広げたいんです」

2024年、大阪のVSで開催した吉田ユニ展「PLAYING CARDS」の盛況を経て、今年、アートラボ事業本部に体験価値創造事業グループを新設した。美術館や自社店舗に限らない場所で入場料型の展覧会を手掛けるチームだ。マーチャンダイズとその販売までも担う。今年8月には新宿で「ジャン=リュック・ゴダール《感情、表徴、情念 ゴダールの『イメージの本』について》展」を開催した。

「TSUTAYAがあった30年と、なかった30年では文化的な豊かさが変わっていると思う。もっとアートの裾野を広げるには、接点を増やすしかない。美術館に足を運ぶ習慣がない人も、たまたま行った商業施設で面白い展示に出会えば興味を持つかもしれない。その"たまたま"をつくりたい」

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そのためには、アートを生み出すアーティスト側へのアプローチも必要で、ここ数年、ソウルや上海など、アートマーケットが育っているアジアのフェアにも進出している。「アーティストとの関係を大切に、日本の現代アートを海外に出していきたい」という言葉には、この仕事を通じてアートの面白さを知った山下の純粋の思いがあふれる。

5年後、10年後には、他社とのパートナーシップを通じて市場拡大のハブになる存在を目指すという。すでに髙島屋、東神開発とは合弁会社TTC LIFESTYLEを設立し、京都蔦屋書店を運営。中国の雅昌文化(Artron)とは空間デザイン領域で提携を結んだ。

一方で事業としては急速に成長させていくより、長く続けていくことを重視しているという。「アート業界のなかで信頼される存在になっていくためにも着実に続けていくつもりです」。

文=青山鼓 写真=若原瑞昌 編集=鈴木奈央

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