作品販売も展覧会企画も CCCがアートラボ事業で「生活提案」を強化

銀座 蔦屋書店(展示作品/石神雄介)

「量より関係性」のビジネスへの糸口に

企業がアート事業に取り組むにあたって大事なことは何か。山下に聞くと、二つの答えが返ってきた。

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「まず、自社の強みとアートを紐づけられているかどうか。CCCの場合は『生活提案』という軸があって、『アートがある生活を提案する』と接続できた」

もう一つは、トップの理解と協力だ。現場だけで頑張っても、投資の判断や専門人材の採用、長期的な視点での意思決定には限界がある。CCCは増田がアートを"生活提案の主軸"として明確に位置づけていたからこそ、専門性への投資として、美術出版社やNADiffを傘下に迎えることも実現した。


展示作品/枝史織
銀座 蔦屋書店のイベントスペースでは数週間おきに展覧会が行われている。(展示作品/枝史織)

現在、アートラボ事業本部は約90人体制。アート企画事業部(作品販売、銀座 蔦屋書店など+本部機能)、コンテンツ企画事業部(『美術手帖』など出版、2016年にグループ化)、そして事業戦略部(部内に体験価値創造事業グループを2025年に新設)の3事業体制を敷いている。KPIは事業ごとに異なり、売上や利益だけでなく、来場者数、PV数、会員数なども指標として設定している。

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アート事業をやっているということが知られていくにつれ、toBでは空間プロデュースなどの引き合いが増え、toCでは、新たな顧客層との接点が生まれた。

「量のビジネスから関係性のビジネスへ。CCCがこれまであまり接点を持てていなかった方々とつながれるようになった。本という商材では年間1000万円購入されるようなお客様はいなかった」と山下。そうした顧客層は、車など高級商材を扱うグループ会社とも親和性が高い。他、SHARE LOUNGEにアートを飾るなど全社的なシナジーも生まれている。

さらに、人材面でも変化が起きているのだという。採用において美大・芸大卒の応募が増え、社内公募では各部署に存在していたアート好きが流動するようになった。

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文=青山鼓 写真=若原瑞昌 編集=鈴木奈央

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