作品販売も展覧会企画も CCCがアートラボ事業で「生活提案」を強化

銀座 蔦屋書店(展示作品/石神雄介)

銀座 蔦屋書店(展示作品/石神雄介)

銀座 蔦屋書店には、平日でおよそ8000人、休日には2万人を超える来店者がある。GINZA SIXの6階、エスカレーターを上がればすぐそこに現代アートの作品が並ぶ。左を見ればギャラリースペースで話題の作家の個展が行われていて、右を見れば、訪日客がデザインやカルチャーの本を物色している。

「アートがある生活の提案」を掲げ2018年に始動し、これまで多くの作品を販売してきたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)のアートラボ事業は、経済産業省が新たに立ち上げた「ART & BUSINESS AWARD 2025」でコーポレート・ストラテジー賞を受賞した。アートの有する価値を活⽤して、経営領域で新たな変化を起こした企業を評する賞だ。

新たな「生活提案」の軸に

「ギャラリーって、慣れないとドアを開けるのも緊張しますよね」とCCCアートラボ副本部長の山下和樹は言う。作品の価格は聞かないとわからない。でもスタッフにそれを尋ねるのもちょっと勇気がいる。日本人がなぜか感じてしまう、その「敷居の高さ」を払拭したい、と山下は考えている。

だから蔦屋書店では、本を選ぶようにアートに出会える空間をつくった。カルチャー誌をパラパラめくり、その隣に飾られた作品を見る。値段は聞かずとも示されている。美しく装丁されたアートブックを手に取る。「本屋だからできること」と山下は言う。美術館のように鑑賞するだけでもなく、ギャラリーほど売買に直結しない。その中間にある「第三の場所」だ。

CCCがアート事業に本格参入したのは2017年、銀座 蔦屋書店の開業がきっかけだった。だが、その種は2015年には蒔かれていた。

「会長の増田(宗昭)がよく言うんです。戦後はモノがなかったからモノに価値があった。モノが余るとプラットフォームに価値が移った。でも今はプラットフォームも余っている。これからは"提案力"の時代だ、と」

CCCは音楽・映画のレンタル、書籍販売を通じて「生活提案」を軸に事業を展開してきた。その提案領域を広げるにあたり、増田が選んだジャンルの一つがアートだった。理由は「人生を豊かにしてくれるものだから」。2015年の時点で増田は「あらゆるライフスタイルがアート化していく」と言っていたという。

2018年には美術出版社(『美術手帖』発行元)、現代アート専門のミュージアムショップNADiff、京文化や日本文化の老舗出版社・光村推古書院をグループ会社化。出版、メディア、店舗、ギャラリー機能を一気通貫で持つ体制を整えた。

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文=青山鼓 写真=若原瑞昌 編集=鈴木奈央

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