リーダーシップ

2025.12.09 15:00

米当局作成「妨害工作マニュアル」に学ぶ、会議が堂々巡りに陥る理由とその対策

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上役がミーティングの仕切り役に向いていない場合も

こうした脱線を防ぐ役割は、会議参加者の中で最も役職が上の者が担うものと決めてかかっているリーダーは多い。だが、そうとは言えないケースも多い。

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最高経営責任者(CEO)の中には、将来のビジョンを示すことが好きで、新たな可能性の探求を続けたがるタイプもいる。一方で、チームの和を重んじるリーダーは、結論を出すよう迫ることにためらいを覚えがちだ。これらの類型に当てはまらないトップであっても、長々と話をしたり、広範な文脈を探ったり、思慮深くあろうとして決定事項を蒸し返すなどして、無意識のうちにミーティングを脱線させることがある。

これらの傾向があるからと言ってリーダーとしての資質に欠けるとは限らないが、やみくもに「上司にミーティングを取り仕切ってもらう」戦略だけでは、組織を停滞させる行動を防ぐには不十分と言える。

すべてのミーティングに必要な、「ディレクター」の役割を担う者

ゆえに、あらゆるミーティングには「導き手(ディレクター)」の役割を担う者が必要だ。筆者が創業したLeadership IQ(リーダーシップIQ)の「What Type of Team Player Are You?(チームプレーヤータイプ診断)」から得られたデータでは、優秀な成績を残すチームは、5つの異なるタイプの役割を持つ者で構成されていることが多いことがわかっている。

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5つの役割とは、ディレクター(導き手)、アチーバー(実践者)、スタビライザー(安定役)、ハーモナイザー(調停役)そしてトレイルブレイザー(開拓者)だ。それぞれの役割が必要不可欠な貢献をするが、「ディレクター」の任務は、グループを結論へと導くことだ。つまり、話し合いが「生産性のある議論」のラインを超えて先延ばしに陥っていることを察知し、本筋からそれた議論を未然に防ぎ、非生産的な停滞をもたらさないようにすることだ。

こうした「ディレクター」の役割を担う者は、必ずしも上役である必要はない。最も適した資質を持つ者としては、プロジェクトリーダーやチームリーダー、あるいは、議論からもはや新しい洞察が得られなくなったことを察知するタイプのメンバーが挙げられる。こうした者は、威圧的な態度でその場を支配するわけではない。むしろ、あらゆるミーティングがどこかの時点で、熟考するメリットを、熟考するコストが上回る状況になることを理解している者だ。

この役割を担う者がいないチームは、予測できる罠に陥ってしまう。こうしたチームでは、「その件はもう決めました」と誰も言おうとしないために、決定していたはずの議題が蒸し返される。また、言葉の用法について延々と議論を重ねるが、それは、本当の問題に向き合うよりも安全に感じられるためだ。本筋から離れた話題を持ち出すのも、難しい決断を迫られる不安を避けるためだ。そして、さらなるデータを要求するが、それは結果を変えられるからではなく、責任を取る時期を引き延ばせるからだ。

こうしたことは意図的な妨害行為ではないが、「ディレクター」役がいないチームでは、ほぼ確実にこうした問題が起きる。

次ページ > チームが正しい道を進むよう促す「ディレクター」の選び方

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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