AI(人工知能)は、もはやバズワードではなく社会に実装されているインフラの一部になった。コミスキー氏はAIが切り拓きつつある新たな活用領域が増えていると語る。その一例が製造業における「デジタルツイン」の進化だ。
シーメンスやダッソー・システムズといった企業は、工業プロセスのデジタルツインを構築するためのコード基盤にAIを取り入れ、生産現場の自動化を大きく前進させている。いわゆる産業向けAIは、サステナビリティ(持続可能性)を高めるための有効な打開策としても、近年とりわけ注目を集めている。
コミスキー氏は、CES 2026でも3つのテーマに沿った技術やサービスの内容がさらに深まることを期待していると述べた。
高齢化社会を支えるスマートホーム技術
高齢化社会の課題解決を目指す「AgeTech(エイジテック)」は、米国でも関心が高まっている分野だ。CES 2025ではAARP(アメリカ退職者協会)のAgeTech Collaborativeが大規模な展示を行い、2026年も出展を予定している。
コミスキー氏は、米国における消費者の意識変化について興味深い指摘をした。スマートホームに関連するデバイスや技術の多くが「ヘルスケア」の目的で使われるようになり、最新の技術や提案に注目が集まっているというのだ。
「例えばスマートドアベルのようなデバイスはホームセキュリティを提供する一方で、離れて暮らす高齢者との迅速なコミュニケーションを可能にしたり、健康管理も支援できる特徴を備えています。スマートホームのデバイスやサービスが各家庭の中に揃い、システムが充実するほど、人々の関心はセキュリティからヘルスケアに拡大、あるいは移行しているように見えます」
例えばアマゾンが2025年春に米国から先行導入した「Alexa+(アレクサプラス)」のような生成AIを搭載する音声アシスタントの進化も、コミスキー氏の説明に照らし合わせると、AgeTechの方向からもその重要性が浮かび上がってくる。
デバイスに手で触れることなく、話しかけるだけである程度複雑な操作ができるという、いわば「アクセシビリティの高さ」を備えるAlexa+対応のスマートホーム機器は、デジタル機器にある程度触れてきた、次世代の高齢者の生活を強力に支えるだろう。


