30年後の日本経済において、何が資源になりえるのか。何が世界に広がる産業となるだろうか。そんな問いを掲げ、各分野の最前線にいる頭脳たちが集まる会議体が瀬戸内にある。
イシカワホールディングス代表取締役社長の石川康晴、ツネイシホールディングス代表取締役社長の神原勝成、デザイナーの原研哉の3人がファウンダーとなり、21年に創設された「瀬戸内デザイン会議」だ。福武財団理事長、大原美術館代表理事といった瀬戸内のキーパーソンのほか、建築家、起業家、編集者など約30人がメンバーに名を連ねる。
これまで毎年、ゲストスピーカーを迎えながらメンバー限定の会議を開き、その内容を書籍にまとめて発信してきた。5年目となる今年は、有識者による生きた対話を閉じることなく届けていこうと、一般向けに拡張。8月24日、岡山市・能楽堂ホールtenjin9を会場に「SETOUCHI Design Conference 2025」を開催した。テーマは「VALUE・価値の共振」だ。
「オーセンティシティとイノベーション、グローバルとローカル、スタートアップと大企業......さまざまな対比に頭をグラグラさせながら、価値を炙り出していけたら」とイシカワHDの石川。本記事では、1日がかりの議論をダイジェストで振り返る。
「私」から「私たち」の時代へ
まず「価値」という壮大な議題に向き合う導入として、会議の“世話役”の原研哉は、「私たち」という主語を提示した。
「戦前の全体主義の反省から、戦後は“私らしさ”が強調、奨励されてきました。しかしそれは、本来、綿々と続いていく“私たち”のものである命に対して、一世代限りの最適性を求めてきたともいえます。それにより地球が枯渇しつつある。主語を変えていかなければ解決しない状況を前に、AIによって人々の頭脳がつながり、特に若い世代において、“私たち”として全体性を回復していこうという潮流が生まれています」。
主語が変われば、マーケティングやコミュニケーションも変わる。個のニーズを掻き立て、消費を促してきた画一的な手法から、全体を見据えた意思の共振や共鳴により人々が動く時代へ。それは肌感覚で感じている人も多いのではないだろうか。
KEYWORD 01|瀬戸内デザイン会議
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(c)Setouchi Design Conference 瀬戸内で事業をする経営者を中心に約30人がメンバーとなり、日本経済の未来、ローカルとグローバルのイシューを議論。領域の異なるプロフェッショナル、かつ決裁権の実力のある参加者が集うことで、「ひろしま国際建築祭」ほか、会議で生まれた構想が実現するなど、推進力を備えた会議体に育ちつつある。



