NASAのフェルミ衛星は、暗黒物質が集中していると考えられている銀河系の中心領域で、ガンマ線光子の痕跡を探索している。今回の研究ではこの領域に着目し、理論モデルで「WIMPの対消滅」から生じると予測されるガンマ線光子を特定した。
「極めて膨大なエネルギーである20GeV(200億電子ボルト)の光子エネルギーを持ち、銀河系の中心方向にハロー状構造を成して広がるガンマ線を検出した」と、戸谷は説明する。「このガンマ線の放射成分は、暗黒物質ハローから予測される形状と非常によく合致している」
さらなる証拠が必要
有力なデータではあるものの、慎重に判断することが当然必要だ。第三者による検証だけでなく、暗黒物質が豊富に存在するその他の領域からさらなる証拠を得る必要もある。銀河系中心と同じく暗黒物質が極めて集中している矮小銀河で同様のガンマ線の痕跡を見つけることが、検証の1つの鍵となるだろう。
「暗黒物質は現在の素粒子物理学の標準理論には含まれていない新しい粒子であることが明らかになる」と、戸谷はコメントしている。「これは天文学と物理学における大きな進歩を示すものだ」
ガンマ線は最もエネルギーの高い電磁波だ。2008年に打ち上げられたNASAのフェルミ衛星は、恒星の残骸から高速で自転するパルサー、宇宙線の起源やガンマ線バーストまでのさまざまな現象を科学的に観測する助けになっている。


