宇宙

2025.12.14 10:00

暗黒物質を「見る」観測、100年の探求の末ついに成功か 東大研究

りゅうこつ座の方向約37億光年先にある弾丸銀河団の合成画像。大小2つの銀河団が衝突して強力なX線(赤は輝度分布、特にピンクは高温の銀河団間ガス)を放っている。この衝突銀河団の観測から暗黒物質(青は質量分布)の存在に関する新たな証拠が提示された(X-ray: NASA/CXC/CfA/M.Markevitch, Optical and lensing map: NASA/STScI, Magellan/U.Arizona/D.Clowe, Lensing map: ESO WFI)

天の川銀河(銀河系)ハロー領域のガンマ線強度の分布地図。銀河中心方向に約100度にわたって広がっている。中央部の灰色部分は銀河面領域で今回の分析から除外された範囲を示す(Tomonori Totani, The University of Tokyo)
天の川銀河(銀河系)ハロー領域のガンマ線強度の分布地図。銀河中心方向に約100度にわたって広がっている。中央部の灰色部分は銀河面領域で今回の分析から除外された範囲を示す(Tomonori Totani, The University of Tokyo)

NASAのフェルミ衛星は、暗黒物質が集中していると考えられている銀河系の中心領域で、ガンマ線光子の痕跡を探索している。今回の研究ではこの領域に着目し、理論モデルで「WIMPの対消滅」から生じると予測されるガンマ線光子を特定した。

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「極めて膨大なエネルギーである20GeV(200億電子ボルト)の光子エネルギーを持ち、銀河系の中心方向にハロー状構造を成して広がるガンマ線を検出した」と、戸谷は説明する。「このガンマ線の放射成分は、暗黒物質ハローから予測される形状と非常によく合致している」

さらなる証拠が必要

有力なデータではあるものの、慎重に判断することが当然必要だ。第三者による検証だけでなく、暗黒物質が豊富に存在するその他の領域からさらなる証拠を得る必要もある。銀河系中心と同じく暗黒物質が極めて集中している矮小銀河で同様のガンマ線の痕跡を見つけることが、検証の1つの鍵となるだろう。

「暗黒物質は現在の素粒子物理学の標準理論には含まれていない新しい粒子であることが明らかになる」と、戸谷はコメントしている。「これは天文学と物理学における大きな進歩を示すものだ」

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ガンマ線は最もエネルギーの高い電磁波だ。2008年に打ち上げられたNASAのフェルミ衛星は、恒星の残骸から高速で自転するパルサー、宇宙線の起源やガンマ線バーストまでのさまざまな現象を科学的に観測する助けになっている。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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