宇宙の最も謎めいた構成要素の1つである暗黒物質(ダークマター)が、100年におよぶ探索の末、ついに見つかったかもしれない。
暗黒物質は電磁波やエネルギーを発しないため、望遠鏡では検出できない。今回の研究では、2008年から地球を周回しているNASAのガンマ線宇宙望遠鏡のフェルミ衛星のデータを用いて、暗黒物質粒子同士が衝突した余波を検出したという。さらに強力な証拠が必要になるものの、これは素粒子物理学における画期的な発見だ。
暗黒物質とは何か
暗黒物質は宇宙に存在する物質全体の約85%を占め、重力でのみ相互作用すると考えられている。すなわち、仮説上の物質であり、他の物体に及ぼす影響によってしかその存在を推察できない。
暗黒物質の存在は、スイス生まれの米国の天文学者フリッツ・ツビッキーが1933年に初めて提唱した。かみのけ座銀河団に属する銀河がまるで実際の何百倍もの質量を持つかのような挙動を示しているのを観測したのだ。ツビッキーはこの観測結果を説明するために、重力を作用させる目に見えない粒子の存在を仮定した。
NASAによると、暗黒物質を構成する粒子は目に見えず、電磁波やエネルギーを放射したり吸収・反射したりしないため、直接検出することはこれまで不可能だった。
暗黒物質の直接検出
東京大学教授の戸谷友則が主導する今回の研究では、暗黒物質粒子の相互作用に関する理論予測と合致するガンマ線の検出を報告している。研究をまとめた論文は学術誌Journal of Cosmology and Astroparticle Physicsに掲載された。「この結果が正しければ、自分の知る限り、人類が暗黒物質を『見る』のは今回が初めてとなる」と、戸谷は述べている。
現在主流となっている仮説では、暗黒物質は弱い相互作用をする重い粒子(WIMP)で構成されることが示唆されている。この仮説の中心的な予測では、2つのWIMPが衝突して消滅する際に特定のエネルギーを持つガンマ線光子を放出するとしている。それで一部の科学者は、このガンマ線光子の痕跡を見つけることに重点的に取り組んでいる。



