放射性同位体発電機の必要性
したがって、Eセイルと太陽電池パネルは観測計画の途中の段階で投棄することになると、パロスは指摘する。それ以降は放射性同位体発電機のような機器で、宇宙機の電力需要を満たす必要があるという。
途方もない長旅
ソーラーセイル(太陽帆)を用いれば年間20AU以上の速度を達成できるため、望遠鏡の目指す焦点域には25年前後で到達できると、トゥリシェフは主張している。
だが、ピサ大学率いるチームは、必要となる期間に関しては、はるかに控え目だ。質量が800kg以下の宇宙機は、650AUに到達するのに最大70年を要するという。この場所は、太陽系のエッジワース・カイパーベルトと、約2000AUから始まる彗星の巣のオールト雲とのほぼ中間にあたる。
ここから地球に送信されるデータは約80時間かけて到着するため、宇宙機は高度な自律性を持って動作する必要がある。
しかしながら、このような観測計画は費用が嵩むことになる。
費用の見積額は数十億ドル(数千億円)から、その20倍に達する金額までにおよぶ。だが、物質科学と航空宇宙推進の分野では今や、主に純粋なコンピューター処理能力と人工知能(AI)によって実現された猛烈な技術革新の時代に完全に突入している。
NASAボイジャー探査機の飛行距離の4倍遠くにある目的地に無人宇宙機を送り込むのは、ほんの10年前では不可能と思われたかもしれない。だが、今日広く受け入れられている技術革新のパラダイムのおかげで、こうした野心的な観測天文学の構想が突如として急速に現実味を帯び始めている。
太陽系外縁部に向かう探査機で構成される先駆的な計画には、最大12億ドル(約1900億円)の費用がかかる可能性がある一方、系外惑星の表面を調査する完全なSGL撮像観測計画には、最大50億ドル(約7800億円)の費用がかかる可能性があると、トゥリシェフは述べている。
まとめ
トゥリシェフによると、主要な科学的観測のための最初の打ち上げからファーストライト(初期の試験観測)までの期間は2050年代にまでおよぶ。すべてが計画どおりに運べば、2030年代半ばまでには、重力レンズ望遠鏡が650AUに向けて打ち上げられるのを見ることができるだろうと、トゥリシェフは話した。


