この技術を利用する天文学者は、観測対象の系外惑星に対して望遠鏡の観測位置や方向を極めて正確に調整する必要がある。
解像度が非常に高いため、各ピクセルが惑星表面のわずか数十kmの範囲に対応し、大陸や海洋、広範な雲パターンなどの特徴を識別できる可能性があると、シーガーは指摘した。
アインシュタインリング
SGL望遠鏡は、アインシュタインリングと呼ばれる現象からの光を集める。ハーバード・スミソニアン天体物理学センターによると、遠方の天体の光が曲げられて完全な輪になる場合にアインシュタインリングが形成される。光の曲がり具合により、時空を湾曲させている物質の分布を特定できるだけでなく、光源を増光させることで本来なら見えない遠方の天体を観測できるようになるという。
トゥリシェフによると、望遠鏡をより遠くに移動させれば、アインシュタインリングと太陽面との間の間隔が拡大する。
宇宙機(望遠鏡)が650AUに達すると、この間隔が十分大きくなり、光学コロナグラフで太陽光を遮ることが可能になる。コロナグラフは太陽光を効果的に遮蔽する光学機器だ。
トゥリシェフによると、観測対象が100光年先にある地球型惑星の場合、SGLは直径約1.3kmの像を写し出す。
1ピクセルずつ「スキャン」
トゥリシェフによると、SGLが写し出す1.3kmの像の内部で宇宙機を移動させ、アインシュタインリングの明るさの変化を測定すれば、重力レンズ像を1ピクセルずつ「スキャン」したことになる。これほど遠距離にある地球型惑星でも、縦横100ピクセル以上を1年間でスキャンできることが、研究チームの試算で明らかになっているという。
だが、SGL望遠鏡は、観測対象に望遠鏡を向けるのが容易ではない。
エストニア・タルトゥ大学研究員(宇宙工学)のマリオ・パロスは取材に応じた電子メールで、宇宙機が目的の領域に到達すれば、焦点面内を移動させて「写し出された像」の特定の位置に向けることができるが、この段階ではもはやまったく別の対象に向けることはできないと説明している。
宇宙機が最初はEセイル(太陽風帯電帆)で推進する場合、太陽風の荷電粒子(陽子)とEセイルのテザー(導電性ワイヤー)が反発することにより、非常に小さいながらも推進剤を必要としない持続的な推力が生じる。
パロスによると、観測計画の当初は太陽のエネルギーが十分にあるため、太陽光発電とEセイルの両方が機能する。だが、目的地が非常に遠いため、入手できる太陽エネルギーは使用不能なレベルにまで低下するのは避けられないという。


