経営・戦略

2025.12.08 13:31

企業変革の新時代:エージェント型AIが実現する協働型OS

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クルペシュ・バット氏、Melento(エージェント型AIによるビジネス変革のために知性と協働を融合させる企業)のCEO兼創業者。

企業テクノロジーの大きな変革は、そのたびにビジネスの新しいオペレーティングシステムを生み出してきた。メインフレームはスケールを定義し、PCはアクセシビリティを定義し、クラウドは俊敏性を定義した。そして今、私たちは新しい時代に突入している—それはインフラだけでなく、知性によって推進される時代だ。

私はエージェント型AIが次世代の企業OSを支えると確信している。それは自律的に行動し、部門を超えてタスクを調整し、継続的な成果を生み出すために人間と協働するシステムだ。

これは単にツールを追加することではない。AIエージェントを企業の運営方法の中核に組み込むことだ。企業OSの未来は協働型知性に根ざしたものでなければならない。行動する機械。導く人間。両者は互いに関わり、学び合わなければならない。

なぜ変革は急務なのか

AIの導入曲線は急峻だ。マッキンゼーの報告によると、現在71%の組織が少なくとも1つの機能で生成AIを使用しており、これは2023年の2倍以上だ。しかし、パイロットプロジェクトから持続的な価値を生み出せているのはほんの一部にすぎない。その理由:ほとんどのリーダーはまだAIをアプリケーション内の機能として扱っている。エージェント型AIには異なる枠組みが必要だ。それはオペレーティングシステムになるのだ。

ガートナーは2029年までに、エージェント型AIが企業の定型業務の最大80%を処理するようになると予測している。これにはワークフローの調整、コンプライアンスチェック、知識検索などが含まれる。この規模の自動化は選択肢ではなくなるとの見方が多く、それに合わせて再設計できない企業はスピードと効率の両面で遅れをとるリスクがある。

ツールからチームメイトへ

エージェント型AIは人間とシステムの関係を変革する。今日の企業ツールは人間のワークフローをサポートするが、明日のツールはそれを実行する。これらのエージェントは単に応答するだけでなく、行動を開始し、互いに交渉し、ルールが破られた場合にエスカレーションする。

リーダーは、エージェントが単独で決定できる範囲、説明が必要な範囲、人間の判断が最終的に必要な範囲の境界を設定する必要がある。人間は置き換えられるのではなく、戦略的パートナーとして位置づけられるべきだ。明日の企業OSは機械だけのものではない。それは設計上、人間とマシンの組み合わせなのだ。

協働型知性の新時代

デロイトはこれを「新しい人間と機械の協働の基盤」と呼んでいる。ビジネスの専門家とAI開発者が協力する部門横断的なグループだ。これらのチームはアプリケーションを設計するだけでなく、エージェントの集団を調整する。調達エージェントがサプライヤーエージェントと交渉し、コンプライアンスエージェントが異常を警告し、人間のリーダーが例外を監督するような状況を想像してみよう。

学術研究によれば、ハイブリッドワークフロー(人間とAIエージェントの組み合わせ)は単独で働く場合よりも優れたパフォーマンスを示す。研究者らは、人間とAIの協働が、人間やAIが単独で作業する場合と比較して、意思決定の精度を最大25%向上させることを発見した。このハイブリッド性はOSにとって極めて重要だ。

明日のOSに取り組む組織は、この協働をアーキテクチャに深く組み込み、人間と機械の知性が意思決定、実行、イノベーションにおいて真のパートナーとして機能できるようにすることが重要だ。

ガバナンスを中核的な設計原則に

エージェントが自律的に行動する場合、ガバナンスは後付けであってはならない。それはOSのアーキテクチャに組み込まれていなければならない。つまり、すべてのエージェントの行動の監査ログ、エスカレーショントリガー、取締役会レベルの報告が必要だ。これがなければ、リスクは生産性よりも速く拡大するだろう。

取締役会は財務に対するのと同じ質問をAIにもしなければならない:誰が承認するのか?どのような管理が存在するのか?責任はどこにあるのか?これらのチェックをオペレーティングシステム自体に組み込む企業は、スピードだけでなく信頼も構築するだろう。

企業のKPI改善とビジネス判断のスケーリング

エージェント型AIは単なる自動化の別のレイヤーではない。企業は価値を創造している。人間とAIエージェントが協働することで、企業は定型業務を軽減し、スピード、精度、コスト削減を実現する。組み込まれたガバナンスにより、リスクが軽減され生産性が向上する。結果として、説明責任を伴う俊敏性が実現する。

しかし、影響を測定するにはリセットが必要だ。サイクルタイムやトランザクションあたりのコストなどの従来のKPIは的外れだ。今重要なのは協働の質、つまり人間とAIがどれだけシームレスに協力できるかということだ。オーバーライド率、エスカレーション時間、信頼スコアが効率と同じくらい重要になる。

人材にとっても、この変化は同様に大きい。従業員はオペレーターからオーケストレーターへと移行し、エージェントを導き、創造性に集中し、顧客の信頼を形成する。早期導入者にとって、その見返りは複利的に増加する。すべての決定が学習を加速し、すべての相互作用がパフォーマンスを向上させる。

経営幹部が今すべきこと

この変革は遠い未来ではなく、すでに進行中だ。企業リーダーにとって、これを乗り切るには思考と行動の意識的な転換が必要だ。新しいプレイブックには5つの重要な動きが含まれる:

1. エージェントが自律的に行動できる決定と、人間の監視が不可欠な決定をマッピングする。

2. 説明可能性、データ管理、エスカレーションのための新しい役割を設計する。

3. 人間とエージェントの両方の成果に責任を持つフュージョンチームを中核機能に組み込む。

4. KPIをプロセス効率だけでなく、パートナーシップの質を測定するように変更する。

5. ガバナンスを強化し、取締役会が財務リスクを監督するのと同様にAIを監督できるようにする。

これらはテクノロジーやIT主導の取り組みではない。戦略的リーダーシップの必須事項だ。

行動への呼びかけ

すべての企業はオペレーティングシステムの上に構築されている。明日のOSは協働機能が組み込まれたエージェント型AIになるだろう。経営幹部にとっての問題は、それを自ら設計するのか、それとも成り行きに任せて受け入れるのかということだ。協働型知性をマスターした競合他社は、スピードと洞察力を複利的に高めるだろう。遅れをとる企業はサイロ化したパイロットプロジェクトに留まる可能性が高い。

この変化は明らかだ。自律型AIエージェントはもはや概念ではなく、企業運営の中核部分になりつつある。彼らは部門を超えて行動し、決定し、調整し、継続的に学習し改善する。先を行くためには、リーダーは組織を根本から人間と機械のパートナーシップのために再設計し始める必要がある。この変化を早期に受け入れる企業は、単に未来に適応するだけでなく、それを形作ることになるだろう。

forbes.com 原文

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