AI

2025.12.10 11:30

OpenAIのAIデータセンター拡張計画、2026年に「現実の壁」に直面する理由

Shutterstock

需要の問題:収益化は間に合うのか

これらすべての投資は、AIサービスに対する需要が、設備投資を正当化できるだけのスピードで顕在化することを前提としている。現在のAI利用の多くは、実験的な段階か無料利用の段階にとどまっており、繰り返し発生するエンタープライズ収益へと転化するのに苦戦している。数百万人規模の無料ユーザーを有料顧客へと転換することは、この業界にとって中心的な課題の1つである。

advertisement

最も収益性の高い顧客であるエンタープライズは、精度やセキュリティへの懸念から、AIを大規模導入するのではなく慎重にパイロット導入している段階だ。確かなROIが確認できるまでは、本格的な支出拡大には踏み切らないだろう。

AI支出の強力な源泉の1つが政府セクターである。防衛・情報機関はAI能力への投資を加速させており、Palantir(パランティア)のような企業にとって急成長市場を生み出している。米国陸軍との100億ドル(約1兆5500億円)規模・10年契約は、こうした持続的なAI需要の一例だ。

一方で、テクノロジーはコンクリートや鉄鋼よりも速く進化する。AIハードウェアの寿命は極めて短く、高価なGPUは4〜6年で陳腐化し、より新しいチップに取って代わられる。今構築している高価なAIクラスターは、刷新サイクルが想定どおり加速すれば、2030年までにほとんど価値がなくなっている可能性がある。つまり、本当の意味で需要が爆発する頃には、現在のインフラはすでにアップグレードを要する状態になっているかもしれない。

advertisement

OpenAIは、AI利用の異例の成長を実現し、減価償却の時計に先行することに賭けている。新たな支出サイクルが始まる前にリターンを生み出すには、短い時間枠しかない。今回のブームでキャパシティが過剰に積み上がれば、使われないサーバーがだぶつき、クラウド価格が崩壊する可能性がある。それは、過剰な設備投資による供給過剰で多くの野心的企業が破綻に追い込まれた、2000年代初頭の通信業界のバブル崩壊の再来となり得る。

次ページ > 競争の問題、限界に近付く市場の忍耐

翻訳=酒匂寛

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事