リーダーシップ

2025.12.08 10:27

AI時代を制する「探検家のマインドセット」:真の競争優位を生み出すリーダーシップ

Adobe Stock

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多くの企業がAI導入に躍起になっている。しかし、AIとともに考える方法を学んでいる企業はごくわずかだ。

最近、大規模なAIトランスフォーメーションを完了したばかりのフォーチュン100企業の幹部チームとの会議でこの現象を目の当たりにした。彼らは新しいツールに数百万ドルを投資し、中央集権型のデータプラットフォームを構築し、業務効率から顧客エンゲージメントまであらゆるものを追跡する洗練されたダッシュボードを立ち上げていた。しかし、会議室の雰囲気は苛立ちに満ちていた。COOは画面を指さして言った。「私たちは未来に投資したのに、まだ立ち往生している。以前より速く動けていない。チームはまだ許可を待っている状態だ」

これがAI導入のパラドックスである。リーダーたちはテクノロジーを購入するが、その価値を引き出すために必要なマインドセットは購入しない。彼らは不確実性から学ぶ手助けとしてではなく、不確実性を減らすことをAIに期待する。彼らが本当に必要としているのはコンパス(羅針盤)なのに、ロードマップを求めている。

現在、実質的な進歩を遂げている企業には一つの共通点がある。私が「探検家のマインドセット」と呼ぶものを持って運営していることだ。彼らは不確実性を排除するものではなく、マッピングするものとして扱う。AIを単なる自動化ではなく、発見のためのツールとして捉えている。そして、実装速度よりも学習速度の方が重要だと理解している。

この1年間で数十人の経営幹部と会話する中で、私は見慣れたパターンに気づいた。組織は興奮から始まり、パイロットプロジェクトを立ち上げ、そして静かに停滞する。AIプラットフォームを展開するが、意思決定の方法は変えない。古い前提に挑戦するのではなく、それを検証する実験を行う。専門知識を分散させるのではなく、それを保持する中央集権的なAIチームを作る。

結果は予測可能だ。導入は起こるが、トランスフォーメーションは起こらない。

従来の組織設計は効率性、予測可能性、コントロールを重視する。これらの強みは世界が安定しているときには重要だ。しかし、急速に変化する市場では、それらが障害になることもある。探検には好奇心、迅速なフィードバックループ、そして公の場で学ぶ意欲が必要だ。オペレーターは「計画は何で、どう従えばいいのか?」と尋ねる。探検家は「私たちがまだ知らないことは何で、それをどうすれば早く学べるのか?」と問いかける。

オープン・アセンブリーハーバード・ビジネス・スクールでの私の仕事を通じて、このシフトがいかに強力であるかを目の当たりにしてきた。高パフォーマンスのチームはアイデアをテストし、バイアスに挑戦し、人間が見落としがちなパターンを発見するためにAIを活用している。彼らは検索範囲を広げるために、フリーランサー、研究者、顧客など外部の協力者を招き入れる。彼らはAIを人間の判断の代替ではなく、洞察を加速させる協力者として扱っている。

探検は即興ではない。それは3つの質問に根ざした規律あるアプローチだ。より良い情報を必要とする決断は何か?証拠を得るための最も速く安価な方法は何か?そして、その証拠を手に入れたとき、私たちはそれをどう活用するのか?私が一緒に仕事をした企業の一つは、45日間で20のAI実験を実施した。測定可能な結果を生み出したのはわずか5つだったが、その5つが数百万ドル相当の新たな収益源を生み出した。残りは明確な学習シグナルを生み出したため、迅速に、そして非難することなく中止された。

組織がこのマインドセットを採用すると、ダッシュボードも進化する。彼らは学習速度を追跡し始める。アイデアから検証された洞察までの時間を測定する。プロジェクトあたりのコストではなく、学習あたりのコストを見る。コード、データ、実験がチーム間でどれだけ再利用されているかを追跡する。毎月どれだけの実験が進行中で、どれだけが中止されているかをモニターする。これらの指標は行動を形作る。リーダーが「何を完了したか?」ではなく「今週何を学んだか?」と尋ねると、学習が文化の一部になる。

昨年、私は2つのグローバル消費財企業がAIの旅を始めるのを見守った。両社とも強力なリーダーと同様の予算を持っていた。最初の企業は最高AI責任者を雇い、すべてのステークホルダーを満足させるロードマップの設計に数ヶ月を費やした。彼らは何かを展開する前に完璧なユースケースを待った。1年後、彼らは洗練されたプレゼンテーション資料を持っていたが、市場へのインパクトはほとんどなかった。2番目の企業は、各事業部門で一つの仮説を特定し、30日以内にそれをテストすることから始めた。彼らは実際のデータと、フリーランサーや顧客代表を含む小規模な機能横断チームで作業した。彼らは長い計画サイクルではなく、迅速なシグナルを通じて勢いを生み出した。

数ヶ月以内に、2番目の企業は3つのAI製品を市場に投入し、どこで責任を持って拡大すべきかを明確に理解していた。最初の企業が戦略を最終決定する頃には、2番目の企業はすでに学習、運営、イノベーションの方法を変えていた。

違いは予算や人材ではなかった。それはマインドセットだった。探検家のマインドセットは好奇心、迅速な実験、オープンな協働を重視する。それはリーダーに古い前提を正当化するのではなく、新しい機会を発見するためにAIを使うよう促す。そして、競合他社よりも速く適応できる組織を作り出す。

AIは、それを導入する企業に報いるのではなく、それとともに学ぶ企業に報いるだろう。探検家のマインドセットを受け入れるリーダーは、自信を持って不確実性をナビゲートし、他者が地形さえ見る前に機会を見つけるだろう。

forbes.com 原文

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