経済

2025.12.08 14:30

「中国版エヌビディア」ムーア・スレッズ、株価420%超上昇で創業者が一躍ビリオネアに

CFOTO/Future Publishing via Getty Images

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中国のAI半導体メーカー、ムーア・スレッズ・テクノロジー(Moore Threads Technology)の創業者である張建中氏が、同社株が上海市場デビューで420%超上昇したことにより、資産10億ドル以上の富豪(ビリオネア)の仲間入りを果たした。同社はいつか「中国のエヌビディア」になるかもしれないという楽観論が広がっている。

フォーブスの試算によると、北京を拠点とする同社の59歳の会長兼CEOは、同社の保有株式に基づいて43億ドル(約6710億円)の資産を築き上げた。ムーア・スレッズは11月下旬に、1株114.28元で7000万株を売却し、80億元(11億ドル/約1250億円)を調達した。これは同社の 目論見書によるものだ。

同社はコメント要請に応じなかった。この新規株式公開は、今年中国で最も注目されているものの一つだ。個人投資家の応募倍率は、最終的に機関投資家から個人投資家に株式の配分を割り当てるクローバック制度が発動されたにも関わらず、2750倍の応募倍率となった。ムーア・スレッズの時価総額は現在2760億元(約4兆3060億円)に達し、同社は調達資金を人材採用や研究開発に充てる計画だ。

大成功を収めたIPO以前、ムーア・スレッズはHSG(旧セコイア・チャイナ、現HongShan Capital Group)や、中国テック大手バイトダンスとテンセントの投資部門など、錚々たる投資家からの資金調達に成功していた。2023年には、同社は米国政府のエンティティリスト(取引ブラックリスト)に追加され、先進的な米国の半導体製造技術へのアクセスが禁止された。

香港を拠点とするエバーブライト証券インターナショナルの証券ストラテジスト、ケニー・ン氏はWeChatメッセージを通じて、同社は米国が最大の地政学的ライバルに対して先進的な半導体の販売を制限する中、中国が技術的自立を推進する動きから恩恵を受けていると述べている。国産チップへの期待の高まりは、カンブリコン・テクノロジーズなどの企業の株価も押し上げている。カンブリコンの40歳の会長兼CEOである陳天石氏は現在、234億ドルの純資産を持つ中国で11番目の富豪となっている。これはフォーブス・リアルタイム長者番付によるものだ。

ムーア・スレッズが手がける製品は、グラフィックプロセッシングユニット(GPU)からAIモデルをトレーニングするためのサポートソフトウェアまで、多岐にわたる。上海を拠点とする証券会社シノリンク証券の11月の調査ノートによると、このようなGPUの国内市場は2024年の1425億元(約2兆2230億円)から2029年には1兆3000億元(約20兆2800億円)に成長するという。

同証券会社はノートの中で、ムーア・スレッズはエヌビディアなどの海外サプライヤーに取って代わる「重要な力」になる可能性が高いと記している。今年の最初の9カ月間で、同社の売上高は前年同期比182%増の7億8460万元(約122億4000万円)に急増した。損失は前年同期比18.7%減の7億2350万元(約112億9000万円)に縮小した。

創業者の張氏は、半導体業界で約20年間働いてきた。目論見書によると、彼は2020年までの14年間、エヌビディアの中国部門を率いており、同年にムーア・スレッズを創業した。目論見書によれば、張氏は以前、中国のデルとHPでシニアエグゼクティブを務めていた。彼の妻である劉珊珊氏は、同社の初期には取締役を務めていたが、2023年に退任した。

forbes.com 原文

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