長期的な影響を意図した戦略的犯罪
こうした歴史的背景は、米シンクタンク、アトランティック・カウンシルの研究員クリスティナ・フックが分析で提示した主張を裏づけている。彼女は、ロシアによるウクライナの子どもの拉致は副次的な人道問題などではなく、将来のどのような和平の枠組みでも対処しなくてはならない、中心的な戦略課題だと論じている。
これまでにロシアからウクライナの家族の元へ戻された子どもは1859人にとどまっており、救出の負担はほぼすべてウクライナ側が負っている。フックによれば、このプログラムの規模とイデオロギー的設計は、ウクライナの将来の人口構成を変え、そのナショナル・アイデンティティーを消し去るという、戦場をはるかに超えた戦争目的を露呈している。国連は2025年7月時点で、ロシアの全面侵攻によるウクライナの子どもの死傷者は2889人にのぼると報告している。
ロシアによるこうした行動の裏にある意図はウクライナで広く認識されている。ウクライナの子どもの人権に関する大統領顧問であるダリヤ・ヘラシムチュークは6月、「目的は、ウクライナの子どもを通じたウクライナ国民のジェノサイド(集団殺害)にあります」と中東の衛星テレビ局アルジャジーラに語っている。「子どもを奪われた国民は存続できません。これは誰もが知っていることです」
米国の政治的関心
メラニア・トランプ米大統領夫人は12月4日、ウクライナの子ども7人が新たに家族と再会できたことを歓迎し、「子どもたちの安全な帰還を確実に実現するという私の決意は揺るぎません」と表明した。メラニアの事務所はこの取り組みをウクライナとロシア、米国の仲介者による人道的なチャンネルと説明し、ウクライナの拉致された子どもたちの運命が国際外交の場で注目を集める焦点になっていることを示した。
ロシアはすぐにこれを政治利用しようとした。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の側近であるキリル・ドミトリエフは、ロシアの子ども担当の大統領全権代表を務めるマリヤ・リボワベロワが、家族と再会を果たしたウクライナの子どもたちと一緒に写った写真をX(旧ツイッター)に投稿し、ロシアはメラニアの「人道的な活動」に謝意を表したと書き込んだ。
リボワベロワに対しては、ウクライナの子どもの強制移送をめぐって国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ている。にもかかわらず、ロシア側がこうした再会を協力の証として位置づけようと試みていることは、クレムリンが拉致した子どもたちに関する情報を、政治的な利益のために引き続き武器化していることを示している。


