中際旭創の直近決算によると、今年第3四半期までの売上高は前年同期比44.4%増の250億元(約5500億円)、純利益は同90%増の71億元(約1560億円)に達した。マッコーリー・キャピタルは、トランシーバーの世界市場が今後、年率70%で拡大し、2028年には400億ドル(約6.2兆円)規模に達すると予測している。
ビリオネアのワンがグーグルを主要顧客に持つに至ったのは、2016年に彼が主導した買収が大きく影響している。かつて国有工場で技術者を務めていたワンは、約40年前の1987年に「Shandong Zhongji Electrical Equipment」を創業した。当時は洗濯機用モーターの製造を主力とし、ハイテクとはほとんど無縁だったと地元メディアは伝えている。しかし、市場が飽和する中で同社の利益は頭打ちとなった。同社は2012年に深セン市場に上場して16億元(約352億円)を調達したが、株価の下落圧力が強まり、ワンは事業の多角化を模索した。
こうした中、ワンは2016年に現会長兼CEOのリウが創業した光学デバイスメーカー「インノライト・テクノロジー」を28億元(約615億円)で買収した。同社は、グーグル・キャピタルによる中国初の投資案件であったが、研究開発を継続するため追加資金を必要としていた。中国の名門、清華大学を経て米ジョージア工科大学で学んだ技術者であるリウは、2017年に合併会社のCEOに就任し、2023年には会長となった。同社は2017年に現社名の中際旭創へと改称した。ワンの息子、シャオドンは同社のディレクター兼エグゼクティブ・バイス・プレジデントを務めている。
清華大学が10月に公表したリウを称える記事によれば、インノライト・テクノロジーは2011年からグーグルを顧客としていた。当時、グーグルは世界各地でデータセンターの建設を加速させていた。マッコーリー・キャピタルのライは、こうしたグーグルとの緊密な連携が、同社の技術力を長年にわたり磨き上げる要因になったと指摘している。
一方、北京本拠のブティック投資銀行シャンソン・アンド・カンパニーでマネージングディレクターを務めるシェン・メンは、中際旭創の製品への需要が永続する保証はないと警告する。AI企業の過大評価への懸念が高まる中、関連インフラへの投資が期待通りの成果を上げられない可能性があるというのがその理由だ。
米中対立が続く中、中国招商銀行の子会社CMBインターナショナルは11月の調査レポートで、地政学リスクと関税の不確実性をリスクとして指摘した。一方、マッコーリー・キャピタルのライは、中際旭創が2022年に稼働を開始したタイの生産拠点を通じて海外顧客に製品を供給していることから、こうしたリスクは管理可能だと見ている。
ライはむしろ、新興技術が中際旭創にとってリスクになり得ると指摘する。例えば、複数の光トランシーバーを束ねて性能を高める技術、コ・パッケージド・オプティクス(CPO)は、実際の製品需要を押し下げる可能性がある。しかしライは、ナスダック上場のブロードコムが主導するこの技術はまだ発展途上であると強調する。「短期的には現実化しないだろうが、CPOが普及すればトランシーバーメーカーに大きな影響を及ぼすだろう」と彼は語った。


