ただ、ウクライナ経済安全保障評議会で分析・調査・研究担当ディレクターを務めるオレナ・ユルチェンコによると、これはたんにEUの既存の制裁を拡大すれば済むような問題ではないという。「重大な脆弱性は、すでにいくつかの前駆物質に関して存在するようなEUの正式な輸出禁止措置ではなく、3つの構造的な抜け穴にあります」と彼女は筆者に述べた。
1つ目の抜け穴は、固体ロケット燃料の前駆物質に関わるサプライチェーン全体が制裁で包括的にカバーされていないこと。2つ目は、第三国のサプライヤーもやはり制裁で網羅されていないこと。3つ目は、実際にこれらの物質を供給している企業である輸出業者とロシアの輸入業者が、依然として制裁対象に含まれていないことだ。
「したがって、これらの抜け穴を確実にふさぐために次のことが求められます。固体燃料に使われるすべての前駆物質のリストを完成させること。EU域内に本社を置く企業に、コンプライアンス(法令順守)義務の対象をEU域外の子会社にも拡大させること。そして、ミサイルプログラム向けの化学物質の供給に直接関わる主要な外国生産業者とロシアの輸入業者に対して、(資産凍結や取引禁止などの)ブロッキング制裁を科すことです」(ユルチェンコ)
ウクライナのスーミ国立大学のオレクシー・プラストゥン教授は、ロシアが重要なサプライチェーンを維持できるかどうかは、西側企業が第三国を通じた迂回取引を間接的に容認することに依存しているケースが多いと解説する。「航空分野のように、一部の分野で(サプライチェーンが)実際に遮断されたのは、ボーイングやエアバスが制限を徹底したからです。しかし、ほかの分野では『並行輸入』や、『聞くな、言うな』といった姿勢のおかげで、制裁対象の産業は適応できてきました」
政治的な計算
ウクライナ経済安全保障評議会のユルチェンコは、ウズベキスタンは中国よりも制裁をかけやすいかという質問に「政治的にも経済的にもそうしやすいでしょう」と答えた。
ウズベキスタンの場合、ロシアの輸入で大きな割合を占める支配的な生産業者が1社あるだけで、EUとの貿易関係も中国に比べればささやかなものだ。「サプライヤー1社とその関連の企業構造に対処するのは、世界的な大国と対立する状況に踏み込むよりずっと容易でしょう」とユルチェンコは言う。


