ロシアでの塩素酸ナトリウムの不足分を埋め合わせてきたのが、ウズベキスタンの大手化学企業フェルガナアゾットだ。フェルガナアゾットはシンガポールのコングロマリット、インドラマ・コーポレーションの傘下にあり、インドラマはインド系のロヒア家が支配している。インドネシア国籍で英国の永住権も持つインドラマのスリ・プラカシュ・ロヒア会長は、欧州の鉄鋼大手アルセロール・ミタルのラクシュミ・ミタル会長と義理の兄弟の関係にある。
報告書は、こうした関係によって皮肉な状況が生じていることに触れている。イスカンデルの重要な原料のサプライチェーン(供給網)にはミタル家とつながりのある企業が含まれるが、クリビーリフでミタルが保有する製鉄所もこのミサイルで攻撃され、従業員が死亡しているのだ。
サプライチェーンには中国企業も
フェルガナアゾットは2024年、1140万ドル(約17億7000万円)相当の塩素酸ナトリウムをロシアに出荷し、2025年上半期には690万ドル(約10億7000万円)分を出荷した。最新の出荷記録は2025年6月のものとなっている。インドラマは2023年にフェルガナアゾットを1億4000万ドル(約220億円)で買収した。
2024年には、ロシアが輸入した塩素酸ナトリウムの61%を中国が供給し、39%をウズベキスタンが供給した。両国は2024年から2025年初めまでに、ロシアに合計で3690万ドル(約57億3000万円)相当の塩素酸ナトリウムを輸出している。
ロシアが塩素酸ナトリウムを輸入に依存しているのは、現状では自国で高品質の塩素酸ナトリウムを生産できないからだ。ロシアは新たな生産施設の建設を進めているものの、大半は稼働開始が2025〜27年になるとみられ、ロシアのミサイル生産能力には重大な脆弱性が残っている。
制裁の抜け穴
塩素酸ナトリウムは、ロシアの産業能力を支える物質として欧州連合(EU)の制裁リストに載っているが、フェルガナアゾットなど、ウズベキスタンと中国の大手サプライヤーはいまだに制裁対象になっていない。


