リーダーが一歩引けば実行が加速
管理上の抑制はリーダーシップのソフトスキルではない。実行戦略だ。
上層部への意思決定の報告頻度が減れば組織は速く動く。権限の境界が明確ならチームは自信を持って行動する。管理職からの絶え間ない介入がないのは、リーダーシップの欠如ではない。組織の設計が機能している証だ。
信頼されていると感じて行動する時、人はより強い当事者意識を持つことが自己決定理論における自律性の研究で示されている。実行面では、自律性はサイクルタイムを短縮する。不要な承認による摩擦を減らし、より良い解決策を発見する実験を促す。
管理職の関与が善意に基づくものであっても抵抗を生む。承認に要する署名が多いほど、組織の動きは遅くなる。チェックが増えるほど、アイデアは停滞する。有益な監督として始まったものがやがてボトルネックになる。
リーダーはこの抵抗を減らすために、3つの構造的な抑制を実践できる。
1. 指示を遅らせる
誰かが助言を求めてきたら、答えではなく質問から始める。「どんな選択肢を検討したのか」「あなたが最終判断する立場ならどうするか」など。こうした質問は意思決定能力を育み、将来のエスカレーション(問題などについて意見を仰ぐ行為)を減らす。
2. 段階的なルールではなくガードレールを設ける
ガードレールは譲れない条件と、その範囲内で人が持つ裁量権を明確にする。明確な枠組みの中で自信を持って行動できるため、実行を加速させる。
3. エスカレーションの範囲を明示的に設計する
チームはどの問題が上司への報告や相談を必要とし、どの問題が不要なのかを知っているべきだ。範囲が明確になれば、管理職は日常的な意思決定の大部分に携わらなくてもいいようになる。
介入を控えるとトップだけでなく各層にリーダーが生まれるため、システムは強化される。


