リーダーシップ

2025.12.07 14:00

優れた管理職は「あえて介入しない」── 部下が能力を発揮する環境を整えて体制強化

skynesher / Getty Images

管理職が介入しすぎるわけ

過剰な管理の多くは不安な要素があるからではなく不安から行われる。手放すより介入する方が安全に感じる。ミスがチーム、あるいはさらに悪いことに自分に跳ね返ってくるのではないかと心配する。サポートしていると思い込んでいるが、実際には自分を安心させているだけかもしれない。

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こうした介入は習慣からきている部分もある。多くのリーダーは、部下を管理する前は優れた1人の貢献者だった。仕事をこなすことが自分の価値を示す手段だった。リーダー職に就いてもその本能は残っており、切り離すのは難しい。

そして見過ごされる恐怖もある。動きの速い企業文化においては、沈黙は不在と誤解されがちだ。関与がほとんど意味を持たない時でさえ、管理職は常に自分が関与していることを証明しなければならないと感じることがある。

このパターンを説明するのに、経営理論家クリス・アージリスと哲学者ドナルド・ショーンの「シングルループ学習」と「ダブルループ学習」の区別が役立つ。シングルループのモードでは、リーダーは目先の問題の修正に焦点を当て、迅速に行動して誤りを防ごうとする。しかしダブルループ学習には、介入衝動の根底にある前提を問うための一歩引いた視点が必要だ。多くの管理職は自分がこうした深いレベルで活動していると思い込んでいるが、プレッシャー下では調べるより行動の方が安全に感じられるため、迅速な修正に走ってしまう。

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大半のリーダーは自分が高いレベルで活動していると信じている。だがプレッシャー下では、周囲の構造が全体的に自律性を支えるよう設計されていないため、直接の関与に戻る。

戦略的な意味での抑制とは、その場しのぎの対応ではなくシステムそのものを改善する自制となる。

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翻訳=溝口慈子

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