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2025.12.22 10:15

頭が良い人ほど動けない「賢者病」の正体と心理学的な脱出法

Getty Images

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学ぶほど、知識が増えるほど動けなくなる——。新しいことを始めようと思っても、「もっと準備してから」と立ち止まってしまう。SNS総フォロワー20万人を超える読書インフルエンサー・土肥優扶馬氏は、この現象を「賢者病」と名づけた。怠けているのではない。真面目で知的だからこそ、「頭が良くなったから」こそ動けなくなるのだ。

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脳の防御システムが働き、3つの見えないブレーキが作動する——「理想肥大」「情報飽和」「自己効力低下」。今回は、そのひとつである「理想肥大ブレーキ」に焦点を当てる。「完璧にやりたい」という気持ちが、なぜ最初の一歩を重くするのか。心理学が解き明かす、行動を阻むメカニズムと処方箋を、『賢者病 考えすぎて動けないがなくなる本』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けする。


「完璧にやりたい」という気持ちが、最初の一歩を重くする

「目標はでっかく持とう!」

ビジネスやスポーツの世界では、こうした言葉が当たり前のように語られています。

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確かに、大きな目標はモチベーションを高め、長期的なビジョンを描くうえで大切な役割を果たします。

しかし、心理学の研究では「大きな目標を掲げること」そのものが、行動につながるわけではないことが指摘されています。

ロックとラサムが提唱した目標設定理論によれば、人間のパフォーマンスを最も高めるのは「困難だが達成可能な目標」です。

反対に、達成の見込みが極端に低い過大な目標は、かえってやる気を削ぎ、行動を妨げてしまうのです。

さらに、トロープとリバーマンの研究では、目標が遠すぎる未来にある場合、人はその目標を「自分の現実から切り離された抽象的なもの」として捉えてしまうといいます。

例えば、「いつか海外に住んでみたい」と思っていても、それが5年後、10年後の話だとしたら、どこか現実味がなくて、今日の行動には結びつきません。

心理的な距離が大きいと、「まだ自分には早い」「今の自分には届かない」と感じやすくなり、具体的な行動に結びつかなくなるのです。

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文=土肥優扶馬/読書インフルエンサー

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