Apple Watchは生活習慣を見直すきっかけを提供する
開発のプロセスにおいて、乗り越えてきた課題の中で最も大きかったことは、Apple Watchユーザーの「グローバルな多様性」を意識しつつ、バイアスのない公平なアルゴリズムをつくる過程だったという。
「総参加者数10万人を超える規模の研究では、テスト用、検証用、トレーニング用など、それぞれのデータセットごとに必ず幅広い被験者の属性が含まれるように徹底しました。この点についてアップルは特に厳密に取り組んでいます。具体的にはBMI(Body Mass Index:体格指数)の異なる方々、肌の色が異なる方々を、どのデータセットにも必ず組み込むようにしています。機械学習アルゴリズムの精度を高める段階では複数種類のデータセットのそれぞれにおいて、幅広い分布が確保されていることが重要だからです」
「高血圧パターンの通知機能」が目指すところについて、ドゥーリー氏は「Apple Watchのユーザーに気付きを与え、行動変容を促すこと」だと強調する。
「私たちはApple Watchを通じて、ユーザーが次の行動を起こすために必要な情報を提供したいと考えています。通知を受け取ったユーザーが、それをきっかけに医師に相談し、生活習慣を見直すきっかけを提供することが私たちの役割です。ユーザーが知識を獲得して、自身の健康の主導権を握っているという自覚を持つことが大切だからです」(ドゥーリー氏)
米国ではすでに先行してこの機能が提供されているが、実際に通知を受け取ったユーザーが医師の診察を受け、治療を開始したという報告がアップルにも寄せられているという。
「最終的には血圧カフ(血圧を測るための帯状の器具)を手に入れて、自宅で定期的に計測することがベストです。しかし、これまではそこに至るまでのきっかけを得ることも困難でした。Apple Watchは、その最初の第一歩を後押しするデバイスでありたいのです」はチェスナット博士は期待を込めて語った。
多くのユーザーの生活に溶け込みはじめたApple Watchが、無自覚になりがちな高血圧のリスクを可視化し、医師による診察へバトンをつなぐ役割も担う。多忙な現代のビジネスパーソンにとっても、自身の健康を守るための強力なパートナーになるだろう。
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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