自身の健康を管理・維持するためのデバイスとして、Apple Watchを身に着けるユーザーは少なくない。2025年の秋、米国で先行導入が始まっていたApple Watchによる「高血圧パターンの通知機能」が、12月4日からいよいよ日本でも使えるようになった。
この新しい機能は、Apple Watchが従来から搭載する光電式容積脈波(PPG)センサー、つまりは「光学式心拍センサー」による生体信号の取得・解析を応用することで実現したものだ。アップルの臨床責任者であるアシャ・チェスナット博士と、Apple Watchプロダクトマーケティング担当のケイト・ドゥーリー氏へのインタビューから、新機能が開発された背景や技術的なブレイクスルーを振り返る。使い方も解説しよう。
毎日身に着けるスマートウォッチで高血圧の兆候を知る
Apple Watchに新たに導入された「高血圧パターンの通知機能」は、アップルが今秋にリリースしたwatchOS 26からの新機能として追加された。Apple S9以降のチップを搭載するApple Watch Series 9以降、およびApple Watch Ultra 2以降の機種と組み合わせて利用できる。
なぜ、スマートウォッチで高血圧の兆候を知る必要があるのか。その背景には、高血圧という疾患が持つ特異なリスクがある。高血圧は心臓発作、脳卒中、腎臓疾患などにつながる。世界では約13億人の成人に影響しているとされるが、それぞれ高血圧への対策によってリスクを下げられるとも考えられている。
しかし、高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれているように、自覚症状がほとんどないケースが多い。可能性がある人々も定期的に医師の診察を受けておらず、また医療機関で受診した際にもその場の緊張や環境要因で数値が変動し、1回の測定だけでは正確な状態が判定しにくい。その結果、高血圧の症状が診断されないまま放置され、ある日突然に深刻な事態を招くことが珍しくない。
今回、Apple Watchに導入された機能は、スマートウォッチが医療機器として診断を下すことを目的としていない。あくまでユーザーに「高血圧のパターン(兆候)」を通知し、医療機関への受診を促すきっかけを提供するものだ。
ユーザーが高血圧パターンの通知を受け取った場合、医師に相談することが推奨される。自身の体質や傾向を自覚した後、家庭用血圧計などで長期間定期的に血圧を測定することが、より正確な健康状態の把握に役立つ。それは結果として、長期にわたる深刻な健康問題のリスクを低減するための早期治療への第一歩となるだろう。



