時計

2025.12.15 16:00

絵画的手法で“時の感情”を描き出す──美しきタイムピース

目には見えない“時”という概念を、時計という機械で可視化する。それはどこかロマンティックで哲学的な行為ともいえるだろう。

フランク ミュラーは、時間とは何かという命題を探求してきた時計ブランド。その最新作は、美術的技法を用いることで“時の感情”を表現した。


美を表現し続けてきたフランク ミュラー

左:ウォッチランドからも見えるレマン湖の美しい水面を思わせるブルーのダイヤルを採用した「ヴァンガード スリム スフマート」。自動巻き、18KPGケース、ケース縦50×横41㎜。¥3,740,000 右:既存のシャトーに合わせて別棟を設計したウォッチランド。左右対称の美しい庭園も見どころとなる。
左:ウォッチランドからも見えるレマン湖の美しい水面を思わせるブルーのダイヤルを採用した「ヴァンガード スリム スフマート」。自動巻き、18KPGケース、ケース縦50×横41㎜。¥3740000 右:既存のシャトーに合わせて別棟を設計したウォッチランド。左右対称の美しい庭園も見どころとなる。

ひとつはメカニズム。トゥールビヨンを中心に、これまで世界に存在しなかった複雑機構を製作し、その精密で美しいメカニズムで多くの時計愛好家を喜ばせた。

もうひとつは、デザイン表現。トノウ カーベックスケースやビザン数字のインデックスなどは、古典的な高級時計の世界に美しい時計を華やかにまとう喜びを取り入れた。

美の探求はフランク ミュラーの哲学のひとつであり、常に新しい表現で高級時計の可能性を広げてきた。そのためにジュネーブ郊外の小さな街ジャントゥに設立したのが、腕時計工房「ウォッチランド」だ。

正面には雄大なモンブランを望み、レマン湖の静かな湖面を見下ろす丘陵地には1900年代初頭に貴族の住居であったシャトーがあり、その周辺に工房を建設して、時計製造を行っている。ここでは、商品開発やデザイン、ムーブメントパーツの製作や組み立てなど、腕時計製造に関連するすべての工程が行われている。

ここで生まれた最新作「ヴァンガード スリム スフマート」は、移ろいとともに変化する“時の感情”を表現した時計だ。

光と影のグラデーション「スフマート」

左:ジュネーブの旧市街の歴史ある建物や豊かな自然から導き出されたブラウンのダイヤルを採用した「ヴァンガード スリム スフマート」。自動巻き、18KPGケース、ケース縦52.3×横42.5㎜。¥3,850,000 右:ウォッチランドでは、いまでも職人の手仕事から美しい時計が生まれる。
左:ジュネーブの旧市街の歴史ある建物や豊かな自然から導き出されたブラウンのダイヤルを採用した「ヴァンガード スリム スフマート」。自動巻き、18KPGケース、ケース縦52.3×横42.5㎜。¥3850000 右:ウォッチランドでは、いまでも職人の手仕事から美しい時計が生まれる。

モデル名にある「スフマート(Sfumato)」とは美術用語で、“輪郭線を描かず、光と影の自然なぼかしで立体感を生み出す”という手法のこと。かの天才レオナルド・ダ・ヴィンチが確立した技法であり、視覚の構造から人の目がどのように世界を見ているかを理論的に探求することで到達したという。

そもそも自然の中ではすべてが連続し、境界は静かに溶け合っている。そこでダ・ヴィンチは、色と影のわずかな移ろいを重ね合わせることで、かたちをにじみ出すように描いた。その代表作こそが『モナ・リザ』であり、そのはっきりと笑っているとも、無表情とも言えないその表情が、無限の解釈となり、人々の心に残るのだ。

時間も似たような個性がある。刻々と流れる連続的で客観的な時間「クロノス」は変えられないが、心に残る特別な瞬間といった、主観的・質的な時間「カイロス」の境界線はあいまいであり、伸び縮みする。時間もまた連続性の中で美しい時を作り出すものだ。

フランク ミュラーの時計は、正確に動くメカニズムを搭載しつつも、感性的なカイロス的時間を楽しむという両面を持つ。だからフランク ミュラーは、スフマートの技法をダイヤルに取り入れた「ヴァンガード スリム スフマート」を創作したのだ。

美しいダイヤルが幸せな時を創る

左:柔らかな陰影によって移り行く時を表現するブラックダイヤルの「ヴァンガード スリム スフマート」。自動巻き、18KPGケース、ケース縦52.3×横42.5㎜。¥3,850,000 搭載されるムーブメントはCal. FM708。パワーリザーブ約35時間。
左:柔らかな陰影によって移り行く時を表現するブラックダイヤルの「ヴァンガード スリム スフマート」。自動巻き、18KPGケース、ケース縦52.3×横42.5㎜。¥3850000 搭載されるムーブメントはCal. FM708。パワーリザーブ約35時間。

「ヴァンガード スリム スフマート」のダイヤルは、まず放射状にヘアラインを入れるサンレイ仕上げを施す。そしてダイヤルを回転させ、コールドエナメル塗料を吹き付け、外側が暗く、中心に向かって明るくなるように何層も重ねてグラデーションをつくる。そして塗装のあとに焼成し、研磨をすることで、ダイヤルの表面には艶やかな光沢が生まれる。カラーはブルー、ブラウン、ブラックがあり、この美しい表情を崩さないために、インデックスは細めのバータイプとなる。

ピンクゴールドのケースも、美しい表情をつくるポイントだ。「ヴァンガード」ケースのデザインは1920~30年代に流行したデザイン様式「ストリームライン」からインスピレーションを得ており、直線と曲線が織りなす硬質で滑らかなフォルムが特徴。ラグをもたないことで、ケースとストラップが滑らかに繋がり、全体的なバランスが美しい。しかもこのモデルに用いるケースは、通常よりも約3㎜薄い設計となっており、厚みは約9.5㎜〜と薄型なので、シャツの袖元にもすっと馴染み、美しい着こなしの邪魔にならない。

「ヴァンガード スリム スフマート」は、見る角度や光の加減によって、さまざまな表情を持っている。それは何かと完璧さを求めがちな現代社会とは一線を画する個性だろう。ビジネスマンにとって時間は重要なルールだ。しかし美しい時計を眺める瞬間くらいは自由でいたい。

「ヴァンガード スリム スフマート」は、美しさで幸せな時間をつくるのだ。

フランク ミュラー ウォッチランド東京
03-3549-1949

text by Tetsuo Shinoda

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