起業家

2025.12.08 12:00

「DJI排除」を狙う米ドローン新興の25歳起業家、著名VCから240億円調達

2025年9月30日に開催された「Forbes Under 30 Summit」に登壇したブレイク・レスニック(Photo by Astrida Valigorsky/Getty Images)

2024年12月に中国政府からの制裁、中国製ドローンに関するロビー活動に巨額資金を投入

彼のオフィスの壁には、中国政府がBrincとレスニック本人に科した制裁措置の通知文のコピーが額に入れて飾られている。2024年12月、中国は同社とその関係者に対し、中国での事業活動や渡航を禁じた。レスニックは、現在進んでいるDJIの禁止措置にも関与している。

advertisement

この3年間で彼は、中国製ドローンの米国内での使用を制限するための働きかけを含むロビー活動に66万ドル(約1億円)を投じている。2024年の推定売上が500万ドル(約7億8000万円)、2025年も1500万ドル(約23億円)規模にとどまる見通しの、深刻な赤字企業としては異例の金額だ。

しかし、その見返りは極めて大きくなり得る。規制が発動すれば「この会社に対する需要は爆発的に増えるだろう」と語るレスニックは、Brincの推定40%を所有しており、その価値は1億9200万ドル(約298億円)に達する。

DJIは、国家安全保障の強化を認めつつ、正当な手続きと透明性を求める反論

議会の対中強硬派は、DJI製ドローンが米国人のセンシティブなデータを中国に送る可能性を懸念しているが、DJIは長年「根拠のない噂話」だと反論してきた。DJIのグローバル政策責任者アダム・ウェルシュは、「米国政府が国家安全保障を強化する権利は当然ある。しかし、それは正当な手続き、公平性、透明性を両立していなければならない」と語る。DJIは現在、TikTokの例にならい、米政府に自社技術の審査開始や禁止の発動延期を求めている。連邦通信委員会(FCC)はフォーブスの再三のコメント要請に応じなかった。

advertisement

現場へ急行するBrinc製レスポンダーの性能と、導入を決めた警察署長の判断

2024年登場したBrincのレスポンダーは、最上位モデルのDJI製ほどではないものの、十分な性能を備えている。充電拠点のネストから発進すると、半径約3キロ以内の緊急事案の現場に最短70秒で到達できる。警官が遠隔で操作するレスポンダーは、満充電で最長42分飛行し、再充電に必要な時間は35分だ。人口9万人に満たない町クイーンクリークでも、このドローンが常に稼働し続けている。

同町の警察は2025年6月、全米でもいち早くレスポンダーを導入したが、それ以降、この機体は450件以上の出動要請に応じてきた。侵入事件・性犯罪・自殺案件・発砲通報などだ。現場到着が最も早かったケースは131件に上り、自動車事故の誤通報のように警官が立ち会う必要のない35件の事案では、レスポンダーが単独で対応した。

ランディ・ブライス警察署長は今後、このドローンを複数機揃えてフリートとして運用する方針だという。同署がこれまで使ってきた主にDJI製のドローンは、今や棚の奥でほこりをかぶり始めている。「我々は禁止措置の対象にならない、米国製のドローンを探していた」と署長は語る。

屋内用モデルや通信機器など、警察組織に向けた複数製品を提供

Brincは、911通報への対応を目的に開発されたレスポンダーだけでなく、他にも複数の製品を提供している。たとえば価格1万ドル(約155万円)からの「Lemur」はSWATチームが屋内で使うことを想定したモデルだ。2500ドル(約39万円)からのソフトボール大の通信機器「Brinc Ball」は、人質事件や自然災害といった、直接接触や携帯電話の受け渡しが難しい場面で、投げ込んで使用することを想定している。

Brincはこれまで警察組織を中心に700以上の顧客を獲得しており、そのうち約100機関がレスポンダーを購入した。購入者は、コロラド州のプエブロ警察のような中小規模の警察署から、米国最大の警察組織であるニューヨーク市警(NYPD)まで含まれる。連邦レベルでは、移民・関税執行局(ICE)も利用中だ。

次ページ > 2017年のラスベガス銃乱射事件を機に、警察へのドローン導入を掛け合う

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事