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2025.12.07 18:00

脳が「ネガティブ思考に囚われてしまう」3つの理由、心理学者が解説

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2. ネガティブ思考はネガティブな出来事を防ごうとする

心理学の研究では、人間がネガティブな経験をポジティブな経験よりも鮮明に記憶する「ネガティビティ・バイアス」が以前から知られている。130人の男子大学生を対象に、彼らの視線を計測したある研究では、ネガティブな感情イベントによって、中心的な細部により注意が向けられることが示され、それによって記憶がより深く刻まれることが判明した。

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これは、ネガティブな経験が脳の情報処理センターの活動を活性化し、とりわけ扁桃体が感情的な記憶を優先的に処理するためである。そしてこの仕組みにより、以下のような事が起きる。

・5つの褒め言葉を忘れても、1つの批判だけは忘れられない
・日々の小さな達成を思い出すのは難しいのに、職場でのミスを何年も覚えている
・誇らしい瞬間は意識的に振り返らないのに、恥ずかしい記憶が何度も蘇る

社会心理学の研究では、人間は利益より損失により強い感情的重みを与えることも示されている。これは「損失回避」と呼ばれ、銀行口座の残高が減ったときの感情から、身近な人からの批判への反応まで、私たちのあらゆる側面に現れる。

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これこそが、ネガティビティ・バイアスが進化の中で担ってきた役割である。これは、単に記憶を形作るだけでなく、意思決定や動機づけ、自己認識までも変化させ、将来の損失やネガティブな経験を防ごうとするものだ。

問題は、意識的にポジティブな経験に注意を向け、それを強化しようとしない限り、脳は何が正しいかではなく、何が問題かに意識を向け続けるという点である。これにより、常に恐れに基づいた生き方に陥ってしまう可能性があるのだ。

3. ネガティブ思考は感情的なフィードバックループを作り出す

ネガティブ思考が根付くと、ストレス反応が引き起こされる。ネガティブなことを考え続けると、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され、脳はさらにネガティブな刺激に敏感になる。

これによって強力なループが生まれる。ネガティブな思考が脳に入り、その苦痛の内容のために脳が身体へストレス反応を起動するよう指示する。その結果、脳と身体は他のネガティブな情報や刺激により敏感になり、最終的に脳の中にさらに多くのネガティブ思考が蓄積される。

Psychoneuroendocrinologyに掲載された2014年の研究では、ストレス後にネガティブ思考を反芻する行為(ストレスイベント後にネガティブな考えを繰り返すこと)が、将来のストレス要因に対してより大きなコルチゾール反応を予測することが示された。脳は危険を予期するよう適応し(実際には危険がなくても)、次に脅威を感じたときに、より強い反応を示すようになる。反芻は、不安やうつの最も強い予測因子のひとつである。なぜなら、ストレス反応を持続的に活性化し続けるからである。

こうしたループがいったん形成されると、それがあなたの意思とは関係なく働くもののように感じることがある。あなたは次のように思うかもしれない。

・「なぜこれを手放せないのだろう」
・「なぜ同じことを考え続けてしまうのだろう」
・「なぜこんなに気になるのだろう」

しかし脳は、何年も、あるいは何十年もかけて条件づけられてきたことを、ただ実行しているにすぎない。良い知らせとしては、こうしたループは意図的な心の習慣で断ち切ることが可能であり、脳は繰り返しによって再構築されるという点である。ネガティブループが形成されるのと同じように、意識的に焦点を移すことでポジティブループも形成できる。

次ページ > ネガティブ思考の循環を断ち切る方法

翻訳=江津拓哉

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