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2025.12.07 18:00

脳が「ネガティブ思考に囚われてしまう」3つの理由、心理学者が解説

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なぜ私たちの脳は、何年も前の恥ずかしい出来事を高い解像度で思い出せるのに、先週もらった褒め言葉を思い出すのに苦労するのだろうか。その理由は、脳がポジティブな考えよりもネガティブな考えを強く記憶しやすい傾向を持つためであり、これは「ネガティビティ・バイアス」と呼ばれている。そして、この認知バイアスは、研究者が「ネガティブ・センチメント・オーバーライド(ネガティブ感情の上書き)」と呼ぶ現象によって、さらに増幅されることが多い。

もし自分にもこうした経験があるなら、それは個人的な性格の癖ではなく、進化心理学の世界では何十年も前から知られ、研究されてきた現象であると理解して、安心してほしい。つまり、あなたが何度も思い出してしまう失敗や恥ずかしい記憶は、おそらく実際にはそこまで深刻なものではないということだ。

このバイアスは、進化によって形作られ、現代のストレスによって強化された、人間の脳に内蔵された仕組みである。そしてこの仕組みがなぜ起きるのかを理解することで、その循環を断ち切り、自分の心の物語を取り戻す手助けになる。

以下に、脳がネガティブへ引き寄せられる3つの主な理由と、その対処法を示す。

1. 脳はネガティブ思考を優先するよう進化した

スマートフォンも、締め切りも、ソーシャルメディアも存在しなかった時代、人間に与えられた役割はただひとつ、生き延びることだった。そのためには、自分に害をもたらす可能性のある、あらゆるものに注意を払う必要があった。草むらのかすかな音、天候の微妙な変化、野生動物の足跡のように見える奇妙な痕跡。これらを見落とせば、死に直結することさえあった。

言い換えれば、潜在的な脅威を見逃すことは致命的だったのだ。一方で、美しい風景や心地よい川のせせらぎのような、ポジティブなものを見逃しても、深刻な結果になることは少なかった。

何千年もかけて、人間の脳は、ネガティブなもの、または脅威に関する情報を優先するようになった。そして現代でも、脳は同じ原始的な警報システムを使い続けており、社会的拒絶、批判、経済的不安、将来の不確実性などを、生存をおびやかす脅威のように扱っている。

ある研究でも、感情処理に重要な脳構造である扁桃体が、感情的に刺激の強い対象に強い反応を示すことが確認されている。扁桃体はポジティブな刺激にも反応するが、脅威が知覚されると特に強く反応するという証拠がある。

そのため、あなたは職場の同僚の不機嫌な声色や、自分が犯したミスを、実際の今のあなたは物理的に安全な状況にいるのにも関わらず、何度も再生してしまうことがある。このようなときは、脳はあなたを苦しめようとしているのではなく、それが知り得る最善の方法であなたを守ろうとしているだけだと、自分に言い聞かせる必要がある。

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翻訳=江津拓哉

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