欧州

2025.12.05 08:30

ロシア軍が戦略を転換 再利用可能な無人機の使用を拡大か

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和平交渉の可能性とは裏腹に、ロシアとウクライナは依然として陰惨な消耗戦を続けている。こうした戦争では通常、前線に重要な兵器を安定的に供給し続けられる側が有利となる。ロシアとウクライナにとって、重要兵器は無人機(ドローン)だ。特に、片道攻撃用無人機は両陣営が広く活用し、現在の戦場を形作る「殺人区域」を構築するために利用されている。しかし、ロシアの最新無人機は片道の攻撃型から脱却し、攻撃と防御の両方の作戦で再利用可能な形式に移行しつつあるようだ。無人機の需要の大きさとロシアの供給網の問題を考えると、この転換は必要不可欠だ。

攻撃用再利用型無人機

ウクライナ侵攻開始当初、ロシア軍は主に「オルラン10」などの固定翼偵察無人機に依存していた。これは砲兵の発見と監視といった伝統的な支援任務を担っていた。戦争が進行するにつれ、ロシア軍はウクライナの戦略を採用し、商用無人機を基にした小型で機動性の高い一人称視点(FPV)無人機を大量に配備した。これらの無人機の低コスト性は単発使用に最適で、標的に直接突入し、衝突時に爆発させることができる。以降、ロシア軍は無人機艦隊の改良を継続し、高性能光学機器、長距離データリンク、耐衝撃性電子機器、自律性、積載能力を増強してきた。ロシアとウクライナの双方にとって、これらの無人機は戦場で最も殺傷能力の高い兵器であり、装甲車両や砲兵、歩兵陣地を破壊する力を持っている。

このような使い捨て無人機は広く活用されてきたが、ロシアの新型無人機の多くは再利用可能なものとみられる。例えば、ソーシャルメディア(SNS)に最近投稿された動画では、ウクライナを流れるドニプロ川の島の上に設置された同国軍の陣地に対し、無人機「ナイトウイッチ」が迫撃砲弾を投下する様子が映し出されている。このヘキサコプター(訳注:6個の回転翼を持つヘリコプター)攻撃用無人機は、積載量20キロ、飛行時間40分、巡航速度時速60キロと報じられている。さらに、同無人機は妨害耐性ナビゲーション、デジタルズーム付き光学熱画像装置を搭載し、1回の出撃で最大4発の弾薬を投下することができる。

ロシア軍は小型の再利用可能なクアッドコプター(訳注:4個の回転翼を持つヘリコプター)「ブルドッグ13」の実戦的な野外試験も実施したと報告している。詳細は限られているものの、報道によれば、積載量は4キロで、ナイトウイッチより小型だという。ウクライナ軍の妨害に耐えるよう設計された高度な感知・制御システムを備え、進化する対抗手段に先んじるよう更新が可能だ。同無人機はモジュール式のペイロードを搭載し、さまざまな攻撃物を運ぶことができる。重要なことに、各種報道では、同無人機が再利用可能であることが強調されている。

ナイトウイッチやブルドッグ13といった再利用可能なシステムにより、ロシア軍は汎用性が高く有能な攻撃用無人機を配備するようになった。これらの無人機は単発使用型では実現不可能な、高度な感知技術や処理技術を組み込むことができる。また、適応性を考慮して設計されており、戦場の状況変化に応じて効果を維持するための更新も可能だ。こうした柔軟性により、戦場での効率と資源利用が大幅に向上する。だが、これらの利点には課題も伴う。無人機を基地に戻す必要があるため、実質的に運用時間が半分に短縮されることだ。

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翻訳・編集=安藤清香

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